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2017.05.16
辛淑玉連載 たんこぶ語れるまでの時間の長さ
連載第485回
 
 

 今から三十年前、歌手の泰葉(初代林家三平の三女)と春風亭小朝が結婚した。小朝は、落語界の天才と呼ばれ、36人抜きで真打ちになった神童である。
 二十年後の離婚会見で、泰葉が小朝に「金髪豚野郎!」と叫んだことで、ワイドショーを賑わした。あまりにぶっ飛んだ感じが、妙に印象に残った。
 このときの小朝の態度は、DV男が妻と連れ立って来ては、「いやぁ、うちのは何もできなくて」とか「すぐパニックになるんですよ」と理路整然と語る様子にそっくりだった。
 はたから見れば甲斐甲斐しい夫で、論理的で、立ち居振る舞いもきちんとしているので、多くの人は夫の方に同情的になる。あんな奥さんと一緒ではさぞ苦労したでしょうね、と。そして、「優しい夫」という称号までもらうのだ。 
 あれから十年。
 泰葉が、自身のブログに、夫から凄まじい暴力を受けていたことを書いた。「小朝の虐待ほんの一例」で始まる文章には、背筋が寒くなった。 「冬の寒い寒い日 私は長かった髪を引きづり回され 水風呂に投げ込まれました 本当に冷たかったよ そういう時は 悲鳴もあげられない」「私は いつも運転をさせられて 小朝は後部座席でふんぞり返っておりました」
 「突然怒鳴りだし 運転中の私に暴行を加え始めました 座席を足で強打し 手で私の頭や顔を殴ります 『分かった、お願いだから、車を止めてから殴ってほしい』と懇願しても それは 許されませんでした 私は ハンドルを握るのがやっとでした 高速道路で始まった時には 本当に命の危険を感じました」
 「殺陣の練習にと木刀を持ち始めた頃には 後部座席から 私の首や頭を木刀で強打しました これが何度も続き 私は本当に 恐ろしい狂気の中にいることを 身をもって感じなければならなくなりました」と。
 彼女が、自分が置かれていた状況を言葉にできるようになるまでには、十年の月日が必要だったのだろう。
 あなたの周りにも「泰葉」はいる。気づいてあげてほしい。




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