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  2. 週刊新社会 >2019.11.12

辛淑玉連載 たんこぶ闘う世界の若者
思考停止の日本人
連載第602回
 香港では、雨傘運動をはじめ、老若男女が民主主義を守れと闘い、先頭に立つ若者たちを親の世代も祖父母の世代も支えている。

 チリでは、地下鉄料金の値上げに怒った高校生たちが駅を占拠し、自動改札のゲートを開けっ放しにして誰でもタダで通れるようにする実力行使に出た。積もり積もった不正に対する若者たちの抗議に、大人たちも続いた。

 2006年、アメリカ西海岸サンディエゴの高校生たちが、期末試験終了後、一斉に街に繰り出して抗議活動を行った。移民排斥法案が州議会を通ろうとしていたときだった。同級生が強制送還されるかもしれない、という危機感の中で彼らは声を上げた。

 当時、私と一緒にその姿を見ていた日本人駐在員の妻は、「高校生は勉強することが仕事なのに…」とつぶやいていた。一方、デモに参加していた高校生は、「いまやらなければいつやるの?いま、送り返されようとしているんだよ」とインタビューに答えた。

 今年に入って、毎週金曜日、ドイツのあちこちの議会前に、十代の若者たちが気候変動への抗議に集まっている。その数は日ごとに増えている。

 その姿を見た、ある日本人教育者は「アビトゥアー(大学入試資格試験)があるのに、あんなことして大丈夫かしら」と言った。気候変動より試験が大事だという彼女はドイツ社会で反原発を訴え、安倍政権に批判的なスタンスの持ち主でもある。

 13年前の米国でも今のドイツでも同じことを言われて、この萎縮した思考停止は日本固有の文化なのではないかと考えた。

 かの日本人教育者は、安倍政権を批判するその口で、平和の少女像の展示には、「あんなもの展示されたら嫌よね」と口にした。

 日本領事館と地元の日本クラブは、連携して展示反対のキャンペーンを始めている。この動きにドイツ社会から批判が噴き出すと、彼女は一転して、「(展示に反対する)そんな日本人ばかりではありません。頑張って」という手紙を博物館に送ろうとした。

 この精神性を理解するのは難しい。彼女は、自身の行動に全く矛盾を感じていないのだ。それが恐ろしい。



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