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2019.06.11
辛淑玉連載 たんこぶ
闘うか、媚びるか 
連載第582回
 「年金80歳支給開始案」の記事を見て、胸が痛くなった。

 これだと、おそらく多くの人が掛け捨てになるだろう。一般に被差別者の平均寿命はマジョリティより短いので、こちらはもっともらえないのではないだろうか。

 私ごとだが、在日も国民年金に加入できるようになったと知った父は、以前印刷会社に勤めていたときの年金記録を取り出して、私に「これからはお前の世話にならなくてもやっていける」「これでお前も嫁に行ける」と言って、嬉しそうに役所に向かった。

 その日の夜、仕事から帰ると、父が部屋の隅で黙って座っていた。受給開始年齢までに規定年数の支払いができない者は、加入の枠から外されたのだ。このとき私は、父の背中を見ながら、どんなことをしてでも親の生活を支えようと心に決めた。

 多くの在日が、就職差別の下で自営や非正規就業を強いられたあげく、国民年金からも排除されたのだから、老後の生活を支える手段は何もない。私たち在日2世3世は、自分たちの老後とともに、親の老後も背負うことになった。

 いまの日本は、在日にしてきた差別が、マジョリティである「日本人」にも拡大している状況だ。はっきり言えば、日本人の「朝鮮人化」「二級市民化」が進んでいる。

 「正社員枠」からの排除による非正規化、さらには年金の剥奪、社会福祉関係費用の削減。貧困化のスパイラルがそこにはある。節約して何とか生きようと思っても、水道も値上げ必至の民営化に向かい、皆保険制度も風前の灯だ。

 情報も、市民からは秘密保護法で奪われ、逆に個人情報はダダ漏れ。内心の自由さえ共謀罪によって奪われ、憲法九条などは安保法制で完全に息の根を止められた。

 さらに、自民党改憲案の緊急事態条項は戒厳令そのもので、そこではすべての人権が否定される。

 そんな生殺与奪の権は、安倍ですらなく、トランプの気分次第である。植民地行政官の下で生きられるのは、友を売った者たちだけだ。

 闘うか、媚びるか、あなたはどっち?



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