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2018.02.20
辛淑玉連載 たんこぶベラ・チャオ
共生とは何か 上
連載第520回
 
 
 刑務官らと歌を歌った。伴奏してくれたのは受刑者。場所はイタリアの刑務所。その中にある放送スタジオだ。「ベラ・チャオ」は第二次世界大戦のとき、イタリアでファシズムに抗して歌われたパルチザンの歌。
 「明日の朝、目が覚めたら闘いに行くよ。恋人よ、さらば」と言って、チャオ、チャオと連呼する有名な歌だ。 
 イタリア北部にあるこの刑務所は、懲罰ではなく更生を目的に運営されている。所内ではコールセンターや機械工作など、受刑者たちがさまざまな仕事をしている。通常の賃金で受刑者が働いているのだ。 
 鞄作りをしていた受刑者は、外の提携ショップで1個50ユーロで販売していると言った。そして、お土産に手作りの財布を持たせてくれた。  ここに囚人服はない。それどころか所内にブティックまである。賃金は仕事の内容にもよるが、だいたい月10万から20万円弱だという。自動販売機もあり、稼いだお金で自由に飲み物を購入できる。 
 出版の仕事をしている受刑者に、「どんな罪でここにいるの?」と尋ねると、「麻薬の運び屋だった」という。 
 この刑務所に来る前にも、イギリスなどで捕まって勾留されていたと話してくれた。今は、いろいろな話題を取材して所内紙を発行している。その他にも、農園や温室栽培の経営、セラピーとしての馬の飼育など、多様な職場がある。もちろんパソコンも使えるし、遠方の人とはネットを使ったスカイプ面会もある。 
 運営関係者は、イタリアの憲法で市民の基本的権利が認められている、受刑者も市民であり、それを実行しているのだと語った。 
 受刑者の社会復帰に向けて、労働、教育、人間関係の構築、外部世界との交流、自由時間の活動、そして宗教などが、ここでは認められている。日本のように受刑者の時間をすべて支配して自ら判断する能力を奪ったりしない。それは人権侵害なのだ。 
 その結果、イタリア全体での平均再犯率が60%のところ、この刑務所では18%という数字が出ている。受刑者の人権を守ることで、市民社会をも、より安全なものにできているのだ。 (続く)




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