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2017.08.15
辛淑玉連載 たんこぶ
やめよう、やめよう
連載第497回
 
 

 ドイツにいると、本当にいろんな質問をされる。一番多かったのは福島原発の汚染水垂れ流し発表についてだが、これなど、日本のメディアではほとんど騒がれていない。
 で、ここ数日は、「なぜ彼は200時間も残業をしたんだ?」「自殺する前になぜ仕事を辞めなかった?」と、連チャンで責められている。
 これは、オリンピックのメインスタジアム(新国立競技場)の建設現場で働いていた23歳の青年が、約200時間も残業したあげく自死した事件だ。残業200時間って、つまり一日平均18時間働くということで、移動や食事の時間などを考えれば、睡眠は4時間とれるかどうか。そこまで働かせられたら、まともな判断などできようがない。
 この競技場、建築家が変わり、デザインが変更され、予算が削減されと、二転三転どころではない。ガンガン計画が変わるのに納期はそのままの建設現場なんて地獄だろう。
 ドイツでは、まず、子どもは遊ぶのが仕事なので夏休みとかに宿題を出すことを禁じている。大人も、夏の休暇は約一月ある。この休暇の間に病気になったら、それは病欠としてちゃんと賃金が支払われ、元気なったらまた休暇が取れる。朝は早いが、定時になれば仕事が途中でもさっさと帰るし、同僚との飲み会もない。職場や働くことは人生の目的ではないからだ。
 今日も、電気工事の人は、時間が来たからと言って、まだ電気が繋がっていないのに「トュース(バイバイ)」と言って帰ってしまった。だから暗闇の中で私はこの原稿を書いている。「社畜」とか「滅私奉公」なんて、こちらではもう、全く説明ができない。なので、なぜ職場を放棄しないのかと問われたら、DVの被害者と同じです、と答えることにしている。そう、逃げられなくなるまで追い詰めた結果なのだ。
 オリンピック利権の元締め電通でも、そして建設現場でも若者が過労死自殺なんて、おかしいだろう。あと三年、被災地を無視して東京だけに人もカネも資材もぶち込んで突っ走っても、祭りが終われば残るのは廃墟と不景気とむしり取られた人たちだけだ。
 オリンピックなんて命かけてやるもんじゃない。辞めようよ。





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