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辛淑玉連載 たんこぶ
 恩 赦

連載第609回
 2019年10月22日、天皇の即位による「恩赦」が、55万人を対象に行われた。

 恩赦とは、国の慶弔時に、受刑者に減刑などの大盤振舞いをして感謝されるという仕組みなのだが、今回、巷ではもっぱら「不公平だ」という声があがっていた。

 彼らは、恩赦というのが国家の悪事を隠蔽するための装置だということを知らない。

 関東大震災(1923年)のとき、約6千名もの朝鮮人を官民で虐殺した事実を隠蔽するために日本政府が行ったのは、朝鮮人による犯罪があったというフェイクニュースを流し、虐殺を正当化することだった。

 そのために、ありもしない朝鮮人の犯罪を必死で作り出した。その頂点に置かれたのが、当時、反戦や反植民地主義で論陣を張っていた朴烈と金子文子を「大逆罪」に仕立て上げ、死刑を宣告した事件だ。

 このでっち上げに対して、朴烈らを支援する動きが朝鮮半島に飛び火して3・1独立運動のような事態となることを恐れた日本政府は、恩赦によって事を収めようとした。

 自分たちで勝手に「事件」を作っておいて、うまく行かなくなると「恩赦」を使って、お前たちを許してやろう、というのだ。金子文子は恩赦を拒否し、獄中で自死した。

 また、1980年代、日本の公民権運動とも言える在日の指紋押捺拒否運動が広がりを見せると、それまでは強気一辺倒で逮捕・起訴していたのに、裁判闘争で負けそうになった途端、政府は恩赦を使って起訴自体をなかったことにした。

 もともと皇国臣民だった旧植民地の人々を、国会で議論もせず、法律も変えず、単なる「通達」一つで国籍を奪い、犯罪者同様の「外国人登録」と指紋押捺を義務付け、動物のように管理してきた事実が暴露されそうになると、昭和天皇の死を奇貨として恩赦を使ったのだ。

 日本という国は、朝鮮人にだけは決して頭を下げたくないという、カルトじみた異常なプライドを持っている。その異常さは、日本という国から離れれば離れるほど痛感する。

 そんな差別心が日本人をも苦しめ、日本の社会を歪んだものにしていることに、いつ気がつくのだろうか。



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