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2017.06.20
辛淑玉連載 たんこぶ
痛い思いをしない男たち
連載第489回
 
 

 16才(高二)の少女が警察に出頭した。手にしたカバンの中には、産み落とした自分の娘の遺体を入れていた。
 出頭した少女を思う。
 どのような妊娠だったのだろうか。出産までの約10ヶ月、どんな思いで学校に通っていたのだろうか。体の変調に、どのように対処していたのだろうか。出産時は一人だったのか。出産後、どのように我が子を取りあげたのか。誰も少女に寄り添う人はいなかったのか。相談できる大人、信頼できる大人は、誰もいなかったのだろうか。そして、どれほどの絶望だっただろうかと。
 報道によると、警察に出頭したとき、「自宅で子どもを産み、遺体を自分の部屋に置いていた」と話したという。少女は、出産後一週間の体で、我が子の死体遺棄容疑で逮捕されたのだ。
 子どもは一人では作れない。そこには「父親」が必ず存在する。しかし、報道からは男の姿は消えている。
 この少女に必要だったのは保護であって逮捕ではなかったはずだ。どのような関係の結果であれ、妊娠は100%女の負担となる。男が痛い思いをすることはない。この少女には、酷い環境の中でよく頑張ったと褒めてあげたい。
 この社会は、性教育に関して悲しいくらい遅れている。障害のある子どもたちが被害者となる確率が高いから行っていた性教育でさえ「淫ら」だと糾弾したのは、この国の為政者たちだ。これでは性暴力被害者・サバイバーが救われることはない。その根底には、抜き難い女への蔑視がある。
 いま、どれほどの女性が「コンドームを付けて」と言えるだろうか。付き合っている相手に「NO」と言えるだろうか。そして、そのような知識を一体どこで学べるだろうか。
 性教育をまともにしない社会、成熟することを淫らなことだと教える社会の中で、生徒が妊娠すればその多くが退学となる。産んだところで育てるための経済支援も環境もない中、子どもを産む選択肢はない。
 少なくとも、逮捕されなければならないのは、この少女ではなかったはずだ。




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