今週の新社会

家族農業を排除
「農薬規制」に水を差す みどりの食料システム戦略

2021/07/20
 農林水産省の「みどりの食料システム戦略」は、有機農業面積25 %などを掲げるが、家族農業の排除や国際的な農薬規制の流れに水を差すのは間違いない。有機農産物の公共調達、とりわけ学校給食で有機農業を拡大する視点もない。

 日本の有機農業面積は耕地の0・5%(18年には2%にする計画があった)。「戦略」は25%(100万ha)にすると打ち上げるが、目標年次は2050年だ。その前提はスマート農業で、その技術革新を待つ計画だ。

 それは人工知能と新たな育種技術、植物工場を組み合わせた有機・無農薬生産に期待をかける。しかし、大きな初期投資が必要となり、家族農家の参入は困難だ。

 つまり、家族農業はすき間産業扱いされ、集約化された農業は新たな資本の利潤追求の場となる。企業農業化であり、そのため種子法の廃止や種苗法改定という布石がすでに打たれている。

 化学農薬の使用量(リスク換算)を50%減らすことも入っているが、要注意だ。高リスク農薬は減らすが、農薬の使用量を減らすということではない。すでに出ているRNA農薬をこれまでの農薬の代替とするだけで、農薬メーカーの利潤策は担保される。新たな脅威が出現しよう。

 また、「戦略」には今年9月の「国連食糧システムサミット」で、30年までの農薬半減、有機農業25%を掲げるEUの戦略「農場から食卓まで」に対抗する意図がある。

 アジア・モンスーン地帯の農業環境を打ち出して、世界的潮流に歯止めをかけようとするものだ。それは農薬や種苗など、バイオテクノロジー企業の立場を代弁するものといえる。国連の進める家族農業にも逆行する。

 日本でも有機農家と自治体が手を取り合い、学校給食等の公共調達に有機食材を導入している先進例はいくつもある。諸外国でも学校給食が有機農業を拡大してきた。

 高付加価値の農産物で利潤確保という農水省の今回の戦略は、国内外の富裕層をターゲットにしたもので、国民すべての安全な食糧確保を前提としたものではない。