今週の新社会

不平等ウイルス
世界で露呈 社会構造の変革を

2021/08/10
=国際NGOオックスファム・インターナショナルが1月に出した報告書「不平等ウイルス」(写真は表紙の一部)

 新型コロナ感染が爆発的に拡大し、歯止めが利かない中で強行された東京オリンピックは、人々の命と暮らしを危機に陥れる政治を延命させてはならないことを浮彫りにした。

 東京都の1日の新規感染者数が過去最多の2848人となった7月27日、菅義偉首相は記者団の質間に「東京五輪を中止する選択肢はない」と答え、「五輪を続けても大丈夫か」との質問にも、「そうした心配はない」と応じた。野党の国会開会要求にも応じない。

 相次ぐ営業規制に苦しみ、救済されるべき中小経営者やそこで働く労働者を尻目に昨年度の予算31兆円弱を使い残す政権を存続させることは国民の首を絞めることになる。

 国際NGOオックスファム・インターナショナルが1月に出した報告書「不平等ウイルス」(写真は表紙の一部)は、世界で様々な不平等が露呈したことを指摘、よりよい社会を作るために提言する。

 まず持続不可能な緊縮財政をやめ、無償のヘルスケア・サービスや教育、その他の公共サービスヘの投資を増やすことで、自由で公正な社会の基礎を作ること、そして安定した仕事の保障を通じたより平等な社会を実現するために労働者の権利、育児休暇、仕事を失った際の支援などが充実している環境を整備する必要を訴え、加えて今まで主に女性が担ってきた低賃金の非正規労働や無償ケア労働について、社会の構造を変える必要があるとしている。

 路上生活者の支援活動など貧困問題に取り組んできた立教大学大学院の稲葉剛特任准教授は、コロナ禍における貧困は、女性や外国人、非正規やフリーランスの労働者など、もともと社会の中で脆弱な立場に置かれていた人たちの間で拡大しており、「貧困パンデミック」は日本国内でも、社会に内在していた差別や不平等を増幅させていると指摘する。

 この現状を変えるため、立憲野党による政権交代は待ったなしだ。五輪強行はそのことを明らかにした。新型コロナ感染を抑え、貧困対策に全力を傾ける政権をつくろう。