今週の新社会

総選挙で立憲勢力
接戦が次の土台

2021/11/10
〝安倍・菅・岸田政治〟からの転換を訴える新社会党の
岡﨑宏美委員長=10月26日、神戸市内


〝強者総取り〟許さぬ
  労働者・市民の闘いこそ


 自公政権の悪政と行き詰まりを背景に、立憲野党が政権交代を訴えた総選挙が10月31日投開票された。自民党は議席を減らしたものの単独で絶対安定多数を確保、岸田政権は継続する。総選挙初の市民と野党の共闘による統一候補擁立は、スタートの土台に立ったばかり。さらに共同行動で信頼を深め、半年後の参院選挙で格差と貧困を深める新自由主義政治にきっちりとくさびを打ち込もう。 

 小選挙区での立憲野党の統一候補は、想定通り自公候補と対等の選挙戦を演じた。 

 小選挙区制の弊害 

 候補者調整の遅れは多くの選挙区での勝利をつかむには至らなかった。選挙終盤では躍進を伝えられた立憲民主党と共産党は、現有議席を割り込んだ。これが小選挙区制度の弊害である。 

 それでも自公は改憲発議の3分の2議席を維持できなかった。しかし、自民党後退の受け皿となって4倍近くに伸ばしたのは改憲強硬派の日本維新だ。 

 近畿ブロックで小選挙区も含め躍進し、他でも自公と立憲野党統一候補の一騎打ちに割り込んで政権批判票の受け皿を演じた。他方、れいわ新選組も比例で3議席を得たが、他の立憲野党は貧困と格差が深まる中で、その怒りの受け皿となりえていない。選挙で勝利するには地域で根を張ることが不可欠だ。 

 一方、新社会党が推薦した社民党は沖縄2区新人の新垣邦男氏の当選に止まったが、九州ブロック比例でのもう一歩に加え、比例区票を伸ばし全国で100万票台に復帰した。 

 アベノミクス回帰

 岸田文雄首相は総選挙を急いだ。格差と貧困にあえぐ国民生活を改善させる手立てがないからだ。総裁選の初期に言及した「新しい資本主義」や「金融所得課税の見直し」をあっという間に棚上げし、アベノミクス同様「成長と分配」論に転じ、「敵基地攻撃能力の保有」も掲げた。

 この延長に非正規労働以上に雇用と収入が不安定化し、労働法が及ばない「雇用によらない働き方」の拡大や、防衛予算のGDP比2%があってはたまらない。不安な社会を招いた原因を隠し、装い新たに“強者総取り”の格差社会の継続を許してはならない。 

 今回不十分さはあっても、市民連合が提示した6項目20課題の「衆議院総選挙における野党共通政策の提案―命を守るために政治の転換を―」を立憲4党が合意し、統一候補擁立が加速した。半年後の参院選挙をはじめとする今後の政治転換に向けて土台となる。 

自民幹事長辞任に 

 特別国会と通常国会が始まれば説明しない政治も、その場しのぎの政治も通用しない。「3A」のひとり、甘利明氏は小選挙区落選の責任をとって幹事長を辞任した。辞任に追い込んだのは、神奈川13区の有権者だ。 

 民主主義と国民生活を立て直す政治や、平和のあり方を国会で議論し、それに呼応する院外の行動が、政治を見ている有権者の行動に変化を引き起こす。 欧米各国や韓国では、民衆が政治を変える大きなうねりを生みだしている。他方、日本は民主主義の後退による政治劣化で各種の国際指標が先進国とは言えない状況にある。 

 今回は大きな成果こそ生みだせなかったが、立憲野党と市民が政権交代を実現する第一歩を踏み出した。