今週の新社会

戦後最大の危機
75年を迎えた日本国憲法
参院選 明文改憲阻止へ!

2022/04/27
1947年5月3日の施行された日本国憲法の解説のために同年に当時の文部省が新制中学校1年生用社会科の教科書として発行した。
憲法の三原則を表した文中の挿し絵。
    


  日本国憲法は、5月3日で施行75周年を迎える。憲法は、この国が第2次世界大戦の戦禍を経て、「天皇主権の軍国主義・帝国主義国家」から、「国民の人権を保障する社会契約に基づく国民主権国家・平和主義国家」として生まれ変わったシンボルである。だが、時の権力者からは常に疎まれ、その改悪が企図されてきた。 

     憲法施行75年をむかえようとする今、明文改憲の戦後最大の危機を迎えつつある。

    それは、1987年の中曽根政権による国鉄分割・民営化で総評の中核にあった国鉄労働組合の解体攻撃と、「護憲勢力」の軸であった「社会党・総評ブロック」の切り崩しから始まる。 

   さらに、「少数派」が国政選挙で代表者を送ることを困難にする「小選挙区制度」が1994年に導入され、最後の「総仕上げ」として、国会による改憲発議が秒読み段階に入ったことを意味する。 

   右翼ポピュリズム政党の維新の会の台頭、旧民主党内保守勢力の自民党への合流、都民ファーストの会との連携などを通じた野党共闘崩しで、明文改憲を一気に進め、「最後の一突き」を狙う。 

   米国は経済的・政治的弱体化と、中国の経済的・軍事的台頭と朝鮮の核武装化という事態を前にしている。そこで日米安保条約を利用し、日本にアジア太平洋地域での「共同防衛責任」を求めている。   

    改憲勢力はこれを利用し、憲法の中核である9条2項の「戦力不保持」「交戦権の放棄」を否定し、軍事力強化とともに「緊急事態」条項を制定し一気に憲法自体を葬り去ろうとしている。 

    また、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を利用して、「核共有・戦力保持」の悲願をとげようと勢いづいている。 

    すでに自民党は、日本国憲法の全面的改定草案を2012年に明らかにしている。そこでは、戦力保持合法化の後に国家主権の下、どのような軍事負担も人権制限も合法化する体制である。 

     憲法を、①「国民主権」から「国家主権」に替え、「公務員の憲法遵守義務」を「国民の憲法服従義務」とし、②国民の人権は国民同士の共存(公共の福祉)を困難にしない限り制約出来ないとする「少数者の人権保護」から、「公益・公の秩序」という多数者の利益の前には「少数者の人権はどのようにも制約出来る」とするものである。 

     私たち護憲派が肝に銘ずるべきものは、憲法は「国民の人権を保護するものであり、最大の人権侵害こそが戦争であり軍隊保持である」という「立憲主義」の基本だけは手をつけさせてはいけないことだ。(加藤晋介・弁護士)