今週の新社会

社会の劣化進める政治姿勢
岸田首相記者会見
改憲・軍拡に執念

2022/07/27
国民生活こそ戦後最大級の難局

     参院選で改選議席の過半数という大勝を得た岸田文雄首相は7月11日、自民党本部で記者会見し、早期の改憲発議を表明。また、今の日本は戦後最大級の難局にあるとし、有事の政権運営が求められるとの認識を示した。

     岸田首相は記者会見の冒頭、銃撃されて死亡した安倍晋三元首相の思いを受け継いでいくと表明。もはや自民党政権である限り、民主主義は多数決の論理と決めつけ、国民生活を米国の利益に差し出す従属の政治は変わることはないと自ら明らかにした。 

    その行きつく先は憲法9条改悪であり、戦争への道だ。憲法改正は、自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党が憲法改正発議可能な3分の2の議席を確保したことで、秋の臨時国会では与野党全体でいっそう活発な議論が行われることを強く期待すると表明。憲法改正の具体的な内容をまとめ、できる限り早く発議に至る取組みを進めると改憲への執念を見せた。 

    あわせて院内だけではなく、自民党が改憲の世論づくりのために、全国で対話集会を開くと表明した。 

    また、ウクライナ情勢を利用して、反撃能力=敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除しないと述べている。5年以内の防衛力の抜本強化を表明したことから、軍事費2倍化の道筋をつける、8月末の来年度概算要求や、年末に策定する国家安全保障戦略から目が離せない。 

     戦後最大級の難局は、国際的な政治環境ではない。新自由主義30年がもたらしたものだ。新型コロナに対応できないのは、利益を生まないものは無駄と、保健医療体制を縮小してきた自公政権の罪だ。 

     経済は賃金削減で利益を出す一点張りで、利益は株主配当と経営者の総取り。所得の分配をおろそかにし、内部留保を積み増すばかりだ。 

     年金危機も対策は支給額の削減だけ。賃金水準は98年以来下がる一方だ。そこに来て今回の物価高騰だ。岸田首相はウクライナ戦争にその原因を押しつけるが、それだけではない。1千兆円を超える国債残高が手を縛り、動きがとれず機動的な為替対策ができないのも一因だ。 

     グローバルにあらゆるものがつながる現代で、緊張をあおる政治は自殺行為。岸田首相は総裁選前に言った「分配の政治」を追求すべきで、党内派閥の力関係を優位に進めようと、「安倍元首相の遺志を継ぐ」などと言っている場合ではない。