今週の新社会

被爆から77年 ヒロシマ式典
核兵器廃絶を

2022/08/17
 ウクライナへのロシアの侵攻が長期化しており、これを好機とばかりに緊張が煽られ、声高に軍拡が叫ばれる中で、原爆投下77年目の8月6日に広島市は平和記念式典を開催した。この中で、松井一實市長の平和宣言と岸田文雄首相の挨拶は対照的だった。


国連事務総長が訴え 「被爆者の証言生かし」


 松井市長は平和宣言の冒頭で、「母は私の憧れで、優しく大切に育ててくれました。そう語る当時、16歳の女性は、母の心尽くしのお弁当を持って家を出たあの日の朝が、最後の別れになるとは思いもしませんでした」と語り出した。


 続けて被爆直後に意識が回復したその女性が語った、「まだ火がくすぶる市内を母を探してさまよい歩く中で目にした」光景は、聞く者に被爆直後の惨状を浮かび上がらせ、二度と原爆投下の惨禍を繰り返してはならないと、改めて認識させた。

 一方、広島市を選挙区とする岸田首相は、「核兵器による惨禍を繰り返してはならない」と語りながらも、「核不拡散条約(NPT)がその基礎」と述べたが、核兵器禁止条約には言及しなかった。

 
 開会中のNPT再検討会議での岸田首相演説同様、米国におもねるもので、核保有国と非保有国との仲介は困難だ。政府の核兵器廃絶は「願望」の域を出ない。

 
 これに対し、現職の国連事務総長として12年ぶりに式典に出席したグテーレス氏は、「被爆者の証言は核兵器の根本的な愚かさを私達に気づかせてくれる」と語り、「核保有国が核戦争を認めることは断じて許容できない」と強調した。



 その上で、「希望の光はある。6月の核兵器禁止条約の締約国会議で終末兵器のない世界へのロードマップを策定した」「核兵器不拡散条約の再検討会議が開かれている。私はこの神聖な場所から、締約国に対して未来を脅かす兵器の備蓄を廃棄するよう、緊急の努力」を求め、核兵器保有国は核先制不使用宣言などの義務を実行するよう呼びかけた。