今週の新社会

岸田首相 原発政策を大転換へ
再稼働・新増設・運転延長など
電力「ひっ迫」に乗じ

2022/09/14
福井や大阪、京都、滋賀から急を聞いて駆け付けた35人が抗議の声を上げた


   「原発への依存度を下げる」と言っていたはずの岸田文雄首相が突然、原発の運転期間の延長や新増設、建て替え、次世代革新炉の開発などを検討すると表明した。 

    東電福島第一原発で未曽有の被害を出し、故郷を追われた周辺住民の傷はいまだ深く、廃炉など事故処理の見通しが全く立っていない状況で、ロシアのウクライナ侵攻などで起きた「電力ひっ迫」を口実の暴挙だ。 

    岸田首相の方針転換の表明は、8月24日に首相官邸で開かれた脱炭素を議論するGX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議の第2回会合でのこと。会議は非公開で、原発推進の産業界や電力会社の幹部、学識経験者、それに連合の吉野友子会長らが参加している。 

    福島原発事故後の政権は、原発の新増設や建て替えは「想定していない」とし、岸田首相も昨秋の自民党総裁選や衆院選でも、新規制基準に適合した原発を再稼働させる意向は示したが、新増設には言及しなかった。 

    先の参院選公約で、それまでの「可能な限り原発依存度を低減」という文言は消したが「安全が確認された原子力の最大限の活用を図る」としていた。 

    首相は原発の新増設への考えを聞かれても答えず、原発を争点から外すことに腐心してきたことがうかがえる。少しずつスタンスを移しながら、財界・電力業界の要求実現を表明する機会を狙っていたのである。 

   そして、参院選で政権基盤を強化できたとみるや、原発政策の180度転換に踏み出したとみられる。しかも、年末に結論を出すというのだから、民主的手続きを無視した暴挙と言わざるを得ない。

   老朽・美浜3号機
     前日発表で再稼働強行


    関西電力は8月30 日、稼働40年超で危険な老朽・美浜原発3号機(福井県美浜町)の再稼働を強行した。8月上旬の予定が7トンもの放射能汚染水漏れ事故を起こして延期など、トラブル続きでの再稼働。しかも関電の発表は前日だった。 

    これに対し、福井や大阪、京都、滋賀から急を聞いて駆け付けた35人が抗議の声を上げた。最初は3号機の前で、続いて美浜町中心部にある関電原発事業本部前で、「事故は起きる! 再稼働やめろ!」と声をからした。