今週の新社会

軍備拡大は増税で
敵基地攻撃能力 保有へ
政府与党「3文書」で方針

2022/11/02
800人が参加し「軍事費より物価対策を」と訴えた「19日行動」=10月19日、国会前  

    敵基地攻撃能力の保有を目的とする安全保障「3文書」の年末改定に向けた作業が、政府・与党で進められている。政府が発表した「有識者会議」の議論の概要は、軍備増強のための財源などの方向を明らかにする。暮らしや社会保障の財源には厳しい政権は、軍事費に関しては増税とその対象が、全国民であることを明確にする。

    9月末開かれた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の「議事要旨」が10月11日に公表された。会議の「要旨」にはこう記されている。 

   「厳しい安全保障環境を乗り切るためには、…経済力を含めた国力を総合し、あらゆる政策手段を組み合わせて対応」する観点から「防衛力の抜本的強化のみならず、自衛隊と民間との共同事業、研究開発、国際的な人道活動等、実質的に我が国の防衛力に資する政府の取組を整理し…総合的な防衛体制の強化について検討する」 

   「こうした取組を技術力や産業基盤の強化につなげる」  

   「有識者会議」は、「安保3文書」改定のために岸田政権が作った集まりだ。「安保3文書」の方向は既に定まっている。防衛省の23年度概算要求には、敵基地攻撃能力を保有するための装備を軸に防衛費の増額、防衛産業育成費などが盛り込まれている。 

    既定方針に基づき、政府が言いにくいことを言ってくれる民間人らを集め、「挙国一致」を装う政府の方針作りが「会議」の狙いだ。 

  「議事要旨」によれば、「武器輸出への制約を取り除き、民間企業が防衛分野に投資する環境を」「防衛産業を国力の一環として捉え直せ」「成長戦略の第一の柱に挙げられた科学技術立国の実現を」等と列記されている。 

  「財源」については、「自分の国は自分で守るのだから、安易に国債に頼るのではなく国民全体で負担を」、「国を守る…国民としての当事者意識を。財源は幅広く負担してもらう」「つなぎ国債は良いとしても、恒久的な財源を」などの増税発言が相次いだ。 

    10月20日には2回目の「会議」が開かれ、空港・港湾などを自衛隊が使えるよう整備すること、そのため地元・自治体の「マインド」を変えさせることなどが議論された。 

     一方、「3文書」を検討する与党協議が、自民・麻生太郎副総裁、公明・北側一雄副代表をキャップに10月18日始まった。両党は、「敵基地攻撃」が可能な条件や「攻撃対象」などで意見が違うと伝えられるが、公明党の支持者向けアリバイ作りと見られる。 

     財源問題でも公明党の西田実仁税調会長は、「防衛は国民全員が受益者になるので、特定の人だけに負担させるのはおかしい」と述べ、「有識者会議」の論調と気脈を通じる。 

     肝心の国会論議は低調で、立憲民主党の質疑も公明党との違いが見えない。