今週の新社会

核威嚇で中国を挑発
最悪の道に踏込む
安保政策〝転換〟を称賛

2023/01/25
  ホワイトハウスで行われた岸田首相(左)とバイデン大統領の
  日米首脳会談=内閣広報室
   

      岸田文雄首相は1月10日から13日にかけてG7の5カ国を歴訪した。その目的は、日本との軍事協力関係強化を確認し、中国に対する国際包囲網を担う意思を明らかにすることだった。安保政策の大転換とともに、国際緊張を加速させる最悪の外遊となった。

  日米首脳会談

      岸田首相はフランス、イタリアとそれぞれ安保協議の常設で合意した。イギリスとは、共同軍事訓練などを容易にする「訓練円滑化」協定を締結した。

    イギリス首相官邸は、「英軍の日本への配備を可能にする、過去一世紀以上で日英間の最も重要な防衛協定」とコメントした。これで日本は、NATOを中国包囲網に引き込む梃子(てこ)となった。 

     ホワイトハウスで行われた岸田・バイデン会談(日本時間14日未明)で発表された「日米共同声明」は、中国・朝鮮・ロシアを「威圧による現状変更の試み」と断じ、日本の安全保障政策大転換を「称賛」した。

    そして、米政府は「核を含むあらゆる能力」で日本の防衛に関与すると明言。敵対国の核を非難しつつ、核威い嚇かくを公言する倒錯も露わにした。また、共同声明は「日米同盟の現代化」「共同の戦力態勢及び抑止力」強化をうたった。

      終わりに、「米国と日本は緊密な同盟国として歩む」と結んだ。

     「5条」の制約を取払う

      日米「2+2」協議で合意 

      日米首脳会談の前段に日本時間12日午前、ワシントンで開かれた外務・防衛閣僚による日米安全保障協議(2+2)では、防衛協力の細目が詰められた。

    敵基地攻撃能力の要である「統合ミサイル防衛(IAMD)」のために「陸・海・空、宇宙、サイバー、電磁波領域を統合した領域横断的な能力が死活的に重要」(2+2共同声明)と確認した。

    また、米軍との作戦一体化のために「安保三文書」が示す陸・海・空自衛隊の統合司令部新設やサイバー部隊の増強を重視。さらに安保条約第5条を宇宙からの攻撃に適用するとし、「日本施政下」での武力攻撃への対処という制約をも事実上取り払った。

    また、沖縄・南西諸島をはじめ軍事基地化のために、公共インフラの日米共同利用の拡大、離島有事に即応する「米海兵沿岸連隊(MLR)」の創設、陸上自衛隊再編と南西諸島への配備強化などが合意された。

    これは、中国と台湾の「両岸問題の平和的解決」( 日米共同声明)どころではなく、「抑止力」の強化は、「台湾有事」を引き起こす挑発になりかねない危険な合意だ。