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今週の新社会
変わらぬ基地
続く苦悩
「復帰」51年の沖縄 毛利 孝雄
2023/05/24
戦場化を前提に ミサイル基地化が急速
この季節、沖縄はその戦後史を画する記憶の日々を迎える。「復帰」51年目となる今年の「5・15平和行進」には、全国から2千名近くが参加し、辺野古新基地断念や平和憲法堅持を訴えた。
次元を超える事態
「変わらぬ基地、続く苦悩」は、昨年同日の『琉球新報』1面トップの見出しだった。50年前と同じ見出しを使い、50年間変わることのなかった沖縄の現実を活写した。
しかし、この1年の沖縄は、「5・15」が持った意味を検証する次元を超える事態に移行しているのではないか。安保関連3文書とともに、沖縄の島々では戦場化を前提とした自衛隊配備・ミサイル基地化が急速に進んでいる。米軍専用施設の70%集中に加え、自衛隊基地面積は復帰時の4・7倍に増えた。
与那国島では、過疎対策と経済活性化のための自衛隊誘致を巡って住民の意見が二分する中で、16年に沿岸監視部隊駐屯地が開設された。町長は「米軍やミサイル配備はない」と説明してきたが、昨年末の日米合同演習では自衛隊機動戦闘車が公道を走り、訓練には米兵が初参加した。
硫黄島化の懸念も
北朝鮮のミサイル発射に備えてパトリオットも持ち込まれ、政府は今後、電子戦部隊・地対空ミサイル部隊配備を予定している。町長は、軍事利用が想定される空港滑走路の延長・港湾整備を要請、さらに島外への避難者を助成する基金条例が検討される事態になっている。
それは、全島要塞化(硫黄島化―全島が基地となり自衛隊員以外の立ち入りは禁止)につながる可能性を秘める。小さな与那国島を巡るこの10年、反対住民らの苦悩を考えると胸の裂かれる思いにかられる。
歴史刻んだ土地を
石垣島では、この3月に地対艦・地対空ミサイル部隊を配備する石垣駐屯地が開設された。沖縄県の最高峰・於お茂も登と岳だけ中腹の緑を切り裂いた石垣駐屯地。
周辺は、沖縄戦後の極貧の中で、また、戦後米軍による土地接収からこの地に入った沖縄島の人たちが、開拓し農業を軌道に乗せ、若い世代に引き継いできた場所だ。沖縄戦と米占領史の断面を刻んだその土地を、今度は自衛隊のために差し出せという二重三重の理不尽を、私たちは許せるだろうか。
工事開始を前に住民投票を求めた署名には、有権者の3人に1人が賛同したにもかかわらず、議会が否決したため住民による裁判(当事者訴訟)が続いている。
これら急速に進む南西諸島の軍事化に対して、沖縄では「再び沖縄を戦場にさせない!」ために、団体や世代を超えた努力が始まっている。この動きに心から連帯したい。(もうり・たかお)
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この季節、沖縄はその戦後史を画する記憶の日々を迎える。「復帰」51年目となる今年の「5・15平和行進」には、全国から2千名近くが参加し、辺野古新基地断念や平和憲法堅持を訴えた。
次元を超える事態
「変わらぬ基地、続く苦悩」は、昨年同日の『琉球新報』1面トップの見出しだった。50年前と同じ見出しを使い、50年間変わることのなかった沖縄の現実を活写した。
しかし、この1年の沖縄は、「5・15」が持った意味を検証する次元を超える事態に移行しているのではないか。安保関連3文書とともに、沖縄の島々では戦場化を前提とした自衛隊配備・ミサイル基地化が急速に進んでいる。米軍専用施設の70%集中に加え、自衛隊基地面積は復帰時の4・7倍に増えた。
与那国島では、過疎対策と経済活性化のための自衛隊誘致を巡って住民の意見が二分する中で、16年に沿岸監視部隊駐屯地が開設された。町長は「米軍やミサイル配備はない」と説明してきたが、昨年末の日米合同演習では自衛隊機動戦闘車が公道を走り、訓練には米兵が初参加した。
硫黄島化の懸念も
北朝鮮のミサイル発射に備えてパトリオットも持ち込まれ、政府は今後、電子戦部隊・地対空ミサイル部隊配備を予定している。町長は、軍事利用が想定される空港滑走路の延長・港湾整備を要請、さらに島外への避難者を助成する基金条例が検討される事態になっている。
それは、全島要塞化(硫黄島化―全島が基地となり自衛隊員以外の立ち入りは禁止)につながる可能性を秘める。小さな与那国島を巡るこの10年、反対住民らの苦悩を考えると胸の裂かれる思いにかられる。
歴史刻んだ土地を
石垣島では、この3月に地対艦・地対空ミサイル部隊を配備する石垣駐屯地が開設された。沖縄県の最高峰・於お茂も登と岳だけ中腹の緑を切り裂いた石垣駐屯地。
周辺は、沖縄戦後の極貧の中で、また、戦後米軍による土地接収からこの地に入った沖縄島の人たちが、開拓し農業を軌道に乗せ、若い世代に引き継いできた場所だ。沖縄戦と米占領史の断面を刻んだその土地を、今度は自衛隊のために差し出せという二重三重の理不尽を、私たちは許せるだろうか。
工事開始を前に住民投票を求めた署名には、有権者の3人に1人が賛同したにもかかわらず、議会が否決したため住民による裁判(当事者訴訟)が続いている。
これら急速に進む南西諸島の軍事化に対して、沖縄では「再び沖縄を戦場にさせない!」ために、団体や世代を超えた努力が始まっている。この動きに心から連帯したい。(もうり・たかお)