道しるべ

目的は軍事研究の強制だ
日本学術会議任命拒否

2020/12/15
 桜を見る会問題での安倍晋三前首相のウソ・虚偽答弁が露呈したが、菅義偉首相も不誠実極まりなく、日本学術会議会員の任命拒否問題では特にひどい。軍事研究強制の意図があるからだ。

 憲法学者の石川健治・東大教授は、「学問の自由の核心は、専門分野の自立性を守ること。その防波堤である日本学術会議に対して人事介入が行われた」と記者会見(10月6日)で指摘した。

説明できないこと

 憲法23条の「学問の自由」は、日本学術会議法が担保してきた。そのことは、中曽根康弘首相(当時)による1983年の国会答弁「政府が行うのは形式的任命に過ぎない。学問の自由、独立はあくまで保障される」が端的に示す。

 菅首相は6名の任命拒否について「総合的、俯瞰(ふかん)的判断」など意味不明の発言を繰り返した挙句、10月26日夜のNHKの報道番組で「説明できることとできないことがある」と居直った。

 菅内閣は国民に説明できないこと、そして学術会議法の解釈を国会に諮らずに変える違法までやって人事権に踏み込むことで、何をやろうとしているのか。

 戦争に協力した苦い反省に立つ学術会議設立の原点と、3度の「軍事研究はしない」との声明を破棄させ、学者・研究者を軍事研究に協力させる変質を押し付けようというのだ。

 そのことは、11月17日の参院内閣委員会の質疑で明らかである。井上信治・科学技術担当相は、自民党の山谷えり子議員への答弁で研究成果が民生と軍事の両面で使われる「デュアルユース」(軍民両用)について検討するよう学術会議の梶田隆章会長に伝えたというのだ。

 山谷氏は、学術会議の軍事研究忌避問題と任命拒否とは無関係と強調したが、任命拒否直後に自民党内で会議の組織改革を検討するプロジェクトチームが立ち上がったのは、「軍事研究に協力」という最終目的を見据えた拒否であることは推測に難くない。

「法の支配」の破壊

 菅政権の旗印は、安倍政権の「継承」で、その一つが「法の支配の破壊」だ。安倍政権は、内閣法制局長官を更迭して「集団的自衛権の行使」を巡る解釈を変え、検察官に適用されない一般の国家公務員法を検察官に適用して定年延長を閣議決定するなど解釈変更を強行した。

 法の支配の破壊は憲法破壊だ。検察庁法改悪を世論の力で阻止したが、日本学術会議の独立と学問の自由を守る闘いを大きくしよう。