道しるべ

歴史的な転換を予感する
「核兵器禁止条約」発効

2021/01/19
 核兵器禁止条約が1月22日発効する。核禁条約の実現は、大国の核が支配する世界から、平和を希求する国際世論と多くの小国の結束によって民主的・人道的に発展していく世界のあり方を示す。

 核兵器禁止条約は、オーストリアやメキシコなどが主導し、2017年7月に国連で採択された。条約に署名した国は84カ国・地域にのぼる。核兵器の開発や生産・使用・保有などに加えて「使用するという威嚇」まで法的に禁じる内容になっている。

背を向ける日本

 昨年10月24日、中米ホンジュラスが批准し、50カ国となって条約発効要件を満たし、発効することになった。

 「核の傘」に固執する日本政府は、条約が採択された17年の国連会議冒頭、不参加を表明し核兵器保有国の会議に参加した。これには、「核兵器のない世界へ各国の橋渡しに努める」とした日本に国際社会から大きな失望が表明された。20年、日本政府提出の核兵器廃絶決議が採択されたが、この10年で賛成は最少、棄権最多という結果となって表れた。

発効は歴史的一歩

 核禁条約には、核保有国と核の傘に入っている国が反対している。もちろん批准していないこれらの国を拘束することはできない。

 だが、条約が発効して国際的な規範となれば、これに反して保有大国が核を使用、威嚇することにプレッシャーを与えるだけでなく、規範に反逆することは難しくなる。そうなれば、核兵器はその維持・管理にかかる莫大な費用とともに無駄なものになる。

 こうした国際的な空気を醸成していくことによって、核兵器保有国・軍部や軍需産業など軍産複合体制を追い詰めることは十分可能だ。

 それは人類が核兵器のない、国連憲章に従って国際紛争を平和的に、話し合いで解決する世界に向かう道でもある。歴史的転換を予感する条約の発効だ。

日本は先頭に立て

 日本の世論は条約に「参加する方がよい」が圧倒的で、菅内閣支持層でも57%が参加する方がよいと答えている(朝日新聞、昨年10月調査)。日本政府の姿勢は、内外世論から孤立し、平和に向かう世界の潮流から取り残されている。

 ビキニでの1954年の米国の水爆実験批判から始まった原水禁運動が日本の民主主義の基礎を固め、運動は世界に広がって核禁条約につながった。核廃絶の道を開く先頭に戦争被爆国・日本が立つことを世界の人々が願い、待っている。