道しるべ

「目安」で較差なくならない

2024/09/25
「最賃」改定の在り方

 
今年の最低賃金改定額が47都道府県で出そろった。今年度の「目安」は一律50円だったが、物価高や人手不足・流失を抑えるために徳島を始め地方を中心に昨年に続き目安を超える引き上げとなった。

 最賃の引き上げ額は、厚労省の中央最賃審議会が都道府県を、経済情勢に応じてA~Cランクに分けて示す「目安」を参考に、都道府県の審議会が決める。  

 特に昨年の改定で2番目の低さとなっていた徳島県は、生計費や物価などが他の都道府県と比べて「中位より上にある」とし、知事が審議会に大幅アップを繰り返し要請した。 

 その結果、85円の引き上げで「徳島ショック」と言われる過去に例を見ない引き上げになった。各地の引き上げで千円超えは16都道府県に倍増した。 

地域別最賃の矛盾 

 最賃のランク制度は1978年に制度がスタートして今日に至るまで、1人当たりの都道府県民所得や1世帯当たりの消費支出など、複数の経済指標から作成される「総合指数」を基にランクの見直しが行われてきた。この指数の差によって、都道府県の金額に差が生じていた。 

 そのため、2023年にはそれまでのABCDの4ランクが、ABCの3ランクに改定された。しかし、地域間の格差は埋まらず、生活費は都道府県間で縮小しているのに、最賃の地域格差が人口流出につながっていると指摘されていた。 

目安ありきでなく 

 今回、徳島県労働局の関係者は、「審議では知事の要望も勘案された」と言う。通常、各都道府県の審議会は、目安を参考に、現状の最賃をいくら引き上げるか検討するが、徳島県最賃審の会長は、「国の目安ありきでなく、やり方を変えた」と明言。物価の後追い、地域間格差を温存する現在のやり方に反旗を翻ひるがえした形だ。 

 非正規の賃金水準は、多くが最賃にへばりついている。日本の労働者の組織率は17 %と低い上に企業別組合で、多くの労働者、特に非正規は団体交渉の外に置かれ、格差が是正できない構造が温存されてきた。

 低賃金や低い労働条件の下にある医療、介護、保育、教育、自治体・公共交通機関などの公共サービス、ガス・水道・電機・通信など、生活インフラ、物流、生活用品を扱う労働者たちの底上げには全国一律最賃の実現とともに、国の社会政策としてエッセンシャルワーカーなど特定の労働者層を焦点化した特定最賃制(旧産業別最賃)を活用した職種別賃金制の導入が必須だ。