道しるべ

実現へ運動を進めよう

2024/10/02
選択的夫婦別姓の導入

  先日行われた自民党総裁選の争点として、選択的夫婦別姓制度の導入が上がった。本気度は疑わしいが、制度導入を認める声が増え、経団連が導入を提言するなど、社会の変化を裏付けた形だ。

  選択的夫婦別姓制度は婚姻に際し、夫婦どちらかの姓にするか、別々のままかを選べるようにすることだ。現行は、民法750条で「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定めており、必ずどちらかの姓に統一する「夫婦同姓」となっている。 

保守勢力の反対で 

  民法改正を求める声は、新憲法制定による「家制度」廃止にさかのぼり、女性差別撤廃条約批准後は、国連からたびたび勧告を受けた。世論の高まりを背景に1996年、法制審議会が選択的夫婦別姓制度の導入を答申した。 

  しかし、答申によって導入されるのではと危機感を抱いた安倍晋三氏ら保守勢力が「夫婦別姓に反対し家族の絆を守る国民委員会」を設立して激しい反対運動を展開し、法案提出は見送られた。 

  2004年、自民党憲法改正PTは24条改正(案)に「婚姻・家族における両性平等の規定は、家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべきである」とし、家族や共同体を社会の単位にする方向を明確にした。 

  選択的別姓の実現を求める運動は粘り強く続いている。裁判も取り組まれ、最高裁は2015年、21年といずれも現行民法を「合憲」とする一方、「制度の在り方は国会で議論されるべき」とした。政府は「社会全体における家族のあり方にも関わる問題であり、国民の間に様々な意見があることから、より幅広い国民の理解を得る必要がある」と消極的だ。 

導入賛成61・0% 

  
社会の考え方は、「同姓である必要はなく、別姓であってもよい」への賛成が61・0%(厚労省の国立社会保障・人口問題研究所による全国家庭動向調査)になるなど、認める声が広がっている。 

   確認しておくべきは、当事者の多くはあくまで生まれもった姓を変えずに名乗りたいと考えているに過ぎない。同姓にするのか、改姓しないのかという、選択肢を認めることは他者に痛みを求めるものではない。 

   憲法24条は、個人の尊厳と両性の本質的平等を定める。難癖をつけて反対する保守勢力の真意は、国家に重きを置いて統治する、戦前の「家制度」への回帰だ。女性だけの課題ではない。制度導入へ運動を進めよう。