鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

労組壊滅作戦 第34回

2020/12/08
 安倍晋三と菅義偉。この2人の封建的関係がもたらした政治的腐敗は、歴史的に見て極めて犯罪的だ。2人に共通しているのは、選挙民を愚弄する傲慢さだ。

 戦後以来の保守党の長期政権、さらにはそれが煮詰まった「一強政治」。それが記者会見や国会での嘘のつき放題、答弁拒否。憲法無視の横暴さはおよそ民主国家の体(てい)をなしていない。

 それには野党勢力が弱い、という根本的な問題があり、それが、ジャーナリズムの権力監視の姿勢の弱さに繋がり、政権与党幹部の頽廃を生みだした。

 野党の弱さは、労働運動や市民運動、学生運動など、大衆運動の弱さを反映している。この運動の一体化を破壊してきたのがほかならぬ自民党の政策だった。

 近年では中曽根康弘の「国労破壊」(国鉄解体)と「総評解散」があり、それ以前の日教組攻撃、「教育改革」がある。さらには、人材派遣法成立による、雇用解体がある。

 社会運動の最大の基盤である労働運動の弱体化は、高度成長時代の「一億総中流」とする思想攻撃も大きく影響した。わたしはその頃、「板子下一枚は地獄だ」と主張していたが、労働運動幹部や労働者は、一刻の繁栄に酔わされていた。

 と書いてきたのはいわば前置きで、今危機感が強いのは、「関西生コン」運動に対する警察、検察、裁判所の攻撃、「労組壊滅作戦」である。生コン業界での団交拒否、解雇、就労拒否、そして89人もの大量逮捕、長期拘留(委員長、副委員長は640日以上)。

 労働争議を暴力事件として扱うのは、戦前の治安維持法と同じ刑事弾圧だ。10月8日、大阪地裁はストライキを「威力業務妨害」として、労組役員に対して、「懲役2年6カ月」の判決を出した。憲法で認められている団結権、争議権の否定である。これでは労働者は、奴隷にされる。