鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

惨事便乗を許すな 第39回

2021/01/26
 国会でのウソ答弁が、サクラ宴会だけでも118回。つまりは有権者を騙し続けた安倍首相は、日本憲政史上に不名誉な大記録を残した。

 ほかにも公文書改竄や公文書破棄。憲法感覚ゼロの安倍首相が、それでも7年8カ月もの長期にわたって、首相の座を占めていた。後世には日本人の政治意識研究の重要な研究材料となろう。

 安倍首相は健康診断のために、車列を連ねた病院に向かい、病気で退陣という、悲劇を演出した。が、時遅く笑いの対象になった。

 放り出された政権は、安部首相に7年8カ月、にこりともしないで仕えた菅官房長官が「継承」することになったが、時あたかもコロナが猖獗(しょうけつ)を極め、安倍、菅の無能ぶりがもろにでて、菅内閣の支持率は急落、短期政権説が浮上してきた。

 もともと菅は、「首相の柄ではないことは自分が一番判っている」と言い続けていた。それがホンネであったろうが、7年8カ月もバカ殿ぶりをそばでみていると、自分にだってできるさ、と思うのは人情というものだ。

 派閥をまとめて、安倍の後継者にしたのは、自民党幹事長の二階俊博だが、二階は「全国旅行業協会会長」。三密、不要不急の代名詞が、旅行だから、コロナ禍はスポンサーにとっての危急存亡事態である。

 国策「GoToトラベル」の後、コロナ感染者は急増、菅内閣の支持率は急落、いまや短期政権で終わりそうだ。政府の無策にコロナウイルスが急拡大、医療崩壊の不安が高まっている。

 それで政府が出したのが、二度目の緊急事態宣言。非常時の私権制限がどこまで認められるのか。戦前、戦中と特高警察が市民の生活を取り締まった日本には、いま罰則や罰金制度はない。

 弱り目の政府がこれを機会に火事場泥棒的に、警察権を強め、自衛隊が幅を利かす「惨事便乗型ファシズム」になるのを警戒しよう。