鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

さようなら原発 第47回

2021/03/23
 「脱炭素」と言いつつ、ちゃっかり原発を22%も残存させる。30年度、政府のエネルギー計画は、原発関連産業と政治家たちの、未来を拓かない無責任かつ強欲の表現である。

 欲望の原子力政策を無惨な陰画にしてみせたのが、関電と高浜町の助役を巡る「原発マネー」のスキャンダルだった。

 70年代前半から、原発建設地帯を取材で回っていたわたしは、原発はカネの力で推進されてきたのはよく知っている。電力会社に膨大に注入されていた税金などの国の資金(税金、電気料金)で、住民を旅行に連れ出し、飲ませ食わせの供応をしていたのだが、電力会社幹部への洋服仕立て券などで、逆流しているとは知らなかった。

 福島原発事故のあとの歴史的な大ウソは「原発はアンダーコントロール」だった。この大うそでオリンピックを招致、つまりは開催されても無観客オリンピックとなりそうなのは、ウソの結末だ。

 わたしたち、「さようなら原発1000万署名市民の会」は事故直後から、内橋克人、大江健三郎、坂本龍一、澤地久枝、瀬戸内寂聴さんなど9人の呼びかけ人によってこの10年、いくつかの集会、デモ、講演会を行ってきた。

 そして3月上旬、衆参両院に第三次分、署名合計881万筆分を提出した。同時に、経産省資源エネルギー庁の電力ガス事業部、原子力立地・核燃料サイクル産業課、原子力政策課、長官官房総務課などの係員と討論した。

 わたしたちの要求は、原発の再稼働は認めない。核燃料サイクルは解体。再処理工場建設中止。もちろん、40年以上の老朽原発は廃炉。再生可能エネルギーの拡大である。日本の原発政策およびプルトニウム政策はまったく破綻している。

 40代前後の担当者が答弁するのを聞いて、与えられた枠の中でしか返ってこない回答を聞いて、官僚の責任の限界を感じていた。

 原発と日本の将来について、虚心坦懐に突っ込んだ議論をする。その場を設けることが必要だ。子どもたちの将来もふくめてもっと真剣に人権と健康について考え、行動しよう。