鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

巨大技術神話 第52回

2021/05/04
 現代ニッポンの三大ムダ事業。
 1、沖縄・辺野古の米軍新基地建設。理由。埋め立ては困難。
 2、青森・六ヶ所村の核再処理工場。理由。時代遅れの危険技術。
 3、JR東海のリニア中央新幹線。その理由。必要がない。

 辺野古工事は1兆円。六ヶ所再処理工場は3兆円でもできない虚大事業だが、今回は割愛する。

 リニア超伝導新幹線は、品川〜名古屋を40分、品川〜新大阪67分というのが謳い文句だが、9兆円。その途上にある静岡県の川勝平太知事が、地下工事によって、大井川から供給されている飲用水が枯渇すると猛反対。

 JR東海にとって、「越すに越されぬ大井川」の難関だが、中央アルプス、南アルプスの下に長大なトンネルで貫通させる難工事。極めつけの大自然破壊だ。

 山梨県都留市の「リニア見学センター」に行くと、流線型の車両が500キロの超スピードで、眼の前を風のように駆け抜け、すぐまたもどってくる。強力な磁力で空中に浮上して走るのだが、新幹線と航空機を体験したあとでは、スピード感に驚きはない。

 むしろおなじ会社があらたに新幹線と競合する路線を造る不採算性を考えさせられる。日本経済は無限に発展する、その幻想の虜が「夢の超特急」(東海道新幹線の惹句)だった。

 「夢の増殖炉」が、安全神話の原発時代を牽引した幻想だった。技術の発達が生活を高める、と信じられていた時代は去った。

 新幹線の4倍もの電力を消費するリニアモーターは、東京電力の柏崎・刈羽、中部電力の浜岡原発を、電源として位置づけていた、と喝破した科学史家の山本義隆氏が書いている。

 「『戦後版の総力戦』としての経済成長を成し遂げ、『経済大国』へと成り上がった日本は、その後、長期の経済停滞を経て、2011年に第二の破局と言うべき福島の大事故を引き起こしたのです…その後も原発に固執することで、世界の趨勢に取り残されてゆくことになったのです」(『リニア中央新幹線をめぐって』。みすず書房)