鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

戦争準備内閣 第54回

2021/05/18
 人びとがコロナ・ウイルスヘの恐怖から、ワクチン注射の早期実施を求め、役所に電話をかけては繋がらない、と不安な毎日に過ごしている。が、肝心の菅首相、ワシントンまで出かけたが、ワクチンの「ワ」もいわず30分だけ面接されて、軍事同盟強化、米製兵器での軍備強化を押し付けられて帰ってきた。

 菅首相をはじめ、右派団体「日本会議」などは、いま、憲法改悪、緊急事態条項設置のチャンスと張り切っている。コロナでの倒産、失業者の急増に対処せず、私権制限を強化したい野望が露骨だ。憲法が時代にそぐわない(菅首相)といって、改憲を主張するのは、人民の窮乏を政策の道具にしたい、邪念が透けて見える。

 外には「台湾有事」、内ではマイナンバーによる個人情報管理。菅内閣の凶暴さが、ますますはげしくなってきた。自民党総裁の椅子を確保するために、右シフトで党内支持を固める戦術にしたようだ。

 そこで、にわかに浮上してきたのが、「重要土地調査規制法案」。軍事基地など、政府が「重要」と見なした施設の周辺1キロを、規制対象にして「機能を疎外する行為」を中止、勧告、命令できる法律をつくろうとしている。

 戦時中、基地は秘密にされて近づけず、その周辺は厳戒態勢。特高警察が「危険人物」を尾行、逮捕、拷問にかけていた。法案には、「注視区域」「特別注視区域」がある。

 いま、宮古島、石垣島、与那国など、台湾に近い離島での、自衛隊基地の建設がすすめられている。新法がさっそくその警備に利用されそうだ。

 「重要施設」と言えば、軍事基地ばかりか、原発、空港、鉄道、ガス、水道まではいる。空港や原発反対の団結小屋などが対象になり、そこにいるひとは、住所、氏名、職歴、活動歴のすべて調査され、尾行されるようになるだろう。

 いよいよ。「特高」警察の出番だ。戦前復帰、戦争ができる国家造り法案なのだ。いよいよ憲法改悪の「国民投票法」は成立されそうだ。警察と自衛隊の力を強める監視国家の完成はまっぴらだ。