鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

起爆剤としての東京五輪 第62回

2021/07/20
 ついに、というべきか、それでも、というべきなのか。いよいよ東京五輪がはじまる。

 本来ならば、マスコミは大騒ぎしているはずだが、スポンサーに名を連ねているのに、どこか距離をおいている。緊急事態宣言下の開催、あまりにも異常だ。

 東京での感染者は高い水準で続いている。それでもなお菅首相は、まるでなんとかのひとつ覚え、「万全の態勢をとって抑えてゆく」。「撃ちてし止まむ」、犠牲者覚悟の特攻作戦である。

 半世紀以上前の東京五輪の熱狂と喝采を想起して、それにスガろうとしている。記者会見でバレーボールの決勝戦、日本中を湧かせた「東洋の魔女」やマラソンのアベベ選手への興奮を語って、珍しく饒舌だった。

 しかし、国民のいのちを預かる政治家としての責任感がまったくない。まるで、バッハIOC会長の奴隷のような五輪のゴリ押し。

 驚くべきことに、彼は「オリンピックはIOCが決定」と言いつのって、すでに「戦争」責任から逃げだしている。見識や実行力ばかりか、人間性の底まで見透かされて、いまや自民党内でもまったくの不人気。

 ということもあって、五輪を人気挽回の起爆剤にしようとする危険なギャンブルは、第二の真珠湾攻撃。

 菅首相の「安全・安心」の根拠は、1日100万回のワクチン接種だった。このために自衛隊まで動員したが、肝心のワクチンは予定通り入荷されず、大規模会場は閑古鳥。安倍前首相につづくデタラメ、大言壮語だ。

 国会で首相が何百回の嘘をついても、責任を問われない。これほど国会が力をもたないのは、残念ながら、野党が力をもたず、バカにされていることの証明である。これから、どれだけ人命が犠牲にされるのか。

 安倍前首相は、ウソばっかりついて退陣した。菅番頭首相は五輪スポンサーの言いなりで、緊急事態宣言下の開会式!世界の笑い者だ。

 PCR検査をサボり、ワクチンの手当てに遅れ、四度目の緊急事態宣言の醜態、自公政治では、いのちが危ない。