鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

安全 安心 破壊首相 第65回

2021/08/10
 「安価、安全」が原発推進派のスローガンだった。

 安倍前首相は、「アンダーコントロール」のウソで東京五輪を招致した。その政策の継承を誓約した菅首相は、すでに原発で破綻した「安全、安心」のスローガンを掲げて、コロナウイルス拡大のもと、東京五輪を強行した。金メダル獲得の勢いに乗じて、日米「安保」強化と憲法改悪に踏みこむ算段だった。

 といっても、菅首相の「安全」が真っ赤なウソだったことは、東京五輪開会式のあと、感染者が爆発的にふえ、あわてて神奈川、千葉、埼玉の首都圏にも緊急事態宣言した経過をみても明らかだ。

 中止を考えるべきだ、と追及されて菅首相、記者団に「それでも人流は減った」などとあいかわらず、はぐらかし答弁だった。わたしたちは二代にわたって公然とウソをつき、恬(てん)として恥じない首相を引きずり降ろすことができていない。
 
 原発「安全」論につづいて、もうひとつのウソの極地、原発「安価」論の破綻も明らかになった。推進官庁の経産省でさえ、認める事実だ。金メダルの数でコロナ感染者と死者の数を帳消し、政権浮揚を狙う賭博政治家。菅首相の欺瞞を、原発とコロナ対策の″失政″として追及したい。

 通産省が発表した2030年の原発の発電コストは、1キロワットあたり11円台後半。これにたいして、事業用太陽光は8円台前半、陸上風力は9円台後半、自然エネルギーにくらべて、原発は2〜3円の高値である。

 気候変動、脱炭素にむけて、再生可能エネルギーを主力電源に転換せざるを得ない時代にはいった。菅内閣はこの期に及んでもなお、原発の比率を20から22%と主張している。

 そのために、原発の稼働年数を40年から60年へ、建て替え、新増設など、電力会社の欲望に沿った方針を捨てていない。菅内閣はコロナ対策に手抜き、東京五輪のゴリ押しで、多くの感染者と死者を発生させた。

 GoToトラベルからG oT oゴリン。地獄への道。さらに、危険でムダ金を浪費する原発に依存しようとは。許せるものではない。