鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

自公支配にさようならを 第71回

2021/09/28
 本稿が掲載されるころ、まさに自民党総裁選挙前夜。マスコミは大騒ぎをしているであろう。それまでにまだ二週間ほどあるので予測はむずかしいのだが、河野太郎、岸田文雄、高市早苗、野田聖子の四氏で票を分け合って、決選投票へ持ちこまれそうだ。

 マスコミの総裁選挙報道が熱っぽくなるにつれて、落ち目の自民党があとに控える衆議院選挙で有利になる。アベ・スガの失政が忘れられるほど、ひとびとはゲームに熱中させられる。マスコミでの過剰な露出が、自民党を身近なものにさせてきた。

 コロナウイルス禍での東京オリンピック・パラリンピックの開催強行が、感染者を増大させ、医療崩壊を招いた。感染者が自宅待機の果てに死亡する悲惨がつづき、冷血菅首相を退陣に追い込んだ。しかし、その事態は「一強」を誇った自民党政治の頽廃が原因だったのが忘れられている。

 安倍氏が総裁選挙に送り出した高市氏は、「敵基地攻撃能力強化」のために、防衛費を倍増の10兆円、精密誘導ミサイル保持、靖国参拝など安倍氏の持論を代弁する極右政治家だ。

 キングメーカー気取りの安倍氏がもちあげて、最大派閥の細田派が支援。野田候補とともに人気の河野支持者を切り崩す。

 脱原発派の河野氏は、選挙にのぞんで原発再稼働は認める、と発言。電力、電機、鉄鋼、造船などの重工業経営者の不安を一掃する戦術転換。それによって、議員票と地方票の多数を集める計算のようだ。石破茂氏も河野氏と連携、協力するので、第一回投票ではトップになりそうだ。

 いち早く立候補を表明した岸田氏は、「新自由主義経済政策からの転換」を公約に掲げたが、森友、加計、サクラなど安倍批判はトーンダウン。結局、決選投票で河野氏を破って、衆院選挙の顔になるだろうか。

 相変わらずの安倍、麻生、二階の長老政治。自民党が原発推進、政治の私物化、格差拡大路線から逸脱することはない。このままでは自民対立憲民主、二大政党の「55年体制」。野党共闘の精神とは、自民党腐敗政治からの解放にあるはずだ。