鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

トヨタの意識改革 第77回

2021/11/10
 トヨタ自動車の「パワハラ自殺」が労災認定。10月21日の各紙の報道は、遺族の記者会見によるものだった。 

 藤沢市にある販売店「神奈川トヨタ自動車」の38歳の営業マンが店長から大声で叱責され、「バカ野郎」といわれ、19年2月ごろにうつ病を発症。5月に自宅で自殺した。 

 会見で男性の父親は「会社の報告書には、ストレスが強い状況を相談しない本人が悪いとの内容が書かれていた。体質を改めるべきだ」と語った(東京新聞)。 

 トヨタ自動車のコメント。「亡くなられた方に哀悼の意を表し、ご遺族にお悔やみ申し上げる。このような事案が再び起きないように、社員が安心して働ける風通しの良い職場風土づくりを目指し、販売店各社の意識変革を促していく」。 

 朝日新聞はその記事に並べて、「トヨタ系11店舗 処分。指導 不正車検で国交省 違反5 2 8台」の記事。日本を代表する儲け頭は、パワハラと車検の手抜きで達成されていた、とのお粗末。 

 ところが、「トヨタのパワハラ自殺」は珍しくない。いままでいくつかあって、「意識改革」などさっぱり。この記事の4ヶ月前にも、「トヨタのパワハラ自殺」が報道されていた。 

 トヨタは「乾いた雑巾を搾る」究極の搾取で成り上がってきた。一秒もムダにしない「トヨタ生産方式」が社是で、わたしは48年も前から「自動車絶望工場」と断定していた。 

 6月に報道された28歳の東大大学院修了のエリートは、「バカ」「アホ」「死んだ方がいい」といわれ、17 年10月、社員寮で自殺した。 

 2年後に労災認定されたが、豊田章男社長が遺族に面会、直接謝罪して解決金を支払った、との美談になった。加害者がホメられるのでは靖国神社の精神だ。

 トヨタの生産方式は、あまりに徹底されていて、労働者から息抜きを奪った非人間的なシステムだ。事務部門では、成果第一主義である。「パワハラ自殺」が連続発生したなら、悪徳会社というべきだ。 

 2010年には40歳の社員が、豊田市の山林で首を吊っている。 (この稿、続く)