鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

エラソーな「敵基地攻撃論」  第88回

2022/02/09
  アベべったり、でないはずの岸田文雄首相、どこからが自分の意見で、どこから、その場しのぎの「聞く技術」なのかがわからない。 

  一月下旬の衆院予算委員会で、自民党の宮澤博行議員の「ミサイル迎撃態勢と敵基地攻撃能力の二つの柱で、国民の命を第一撃から守って行かなければならない」などと、徒いたずらに危機感を煽るエラソーな質問。岸田首相はこれにたいして、一国の長としてたしなめることもなく、つぎのように答弁した。 

  「迎撃能力を高める不断の努力は必要だ。敵基地能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的な検討を進めたい」 

  敵本土の敵基地を叩くミサイル攻撃。参戦そのもので、日本をまたもや壊滅させる無責任な暴論、暴挙だ。 

 「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」(「日本国憲法」前文)たのが、戦後の誓いだった。ところが、永すぎて、腐敗した自民・公明連立政権は、軽はずみな敵基地攻撃などの暴論を、制止しようともしない。 

  迎撃ミサイルの大量輸入でアメリカに媚を売るのか、日本の兵器開発でメーカーを喜ばせるのか。調子に乗ってミサイルを発射した場合、沖縄の島々がどれだけの猛反撃にさらされることになるのか。想像力ゼロ。 

  折木良一・元統合幕僚長は「敵基地攻撃」はあまりにも露骨だ、として「反撃能力」という(「日本経済新聞」1月12日)。言葉でごまかす、得意の戦法だ。自民党では、二度も政権を投げ出した安倍晋三元首相が、院政を敷いていて「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」とご宣託。 

  台湾に中国が攻めてくる、と言う虚言だが、だから自衛隊は米軍と一緒に戦えというのか。台湾でなにか起きれば、沖縄から米軍が出動する。自衛隊をそれに従軍させるのか。 

  「戦争へ」ではなく「平和へ」の努力。それが日本の使命だ。