鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

張り切りはじめた改憲派  第95回

2022/04/13
  米国防費を前年度にくらべて4%ふやす、とバイデン大統領は議会に要求した。ロシア軍のウクライナ侵攻に対抗する予算措置で、これで国防費は8133億ドル、日本円で101兆円。この金額は日本の国家予算の一年分に相当する。 

  もちろん世界一の金額である。ちなみにいえば日本の防衛費は5兆4千億円、補正予算をあわせると6兆円だが、米国のほぼ20分の1。平和憲法の恩恵だ。 

  ロシアの戦争(プーチンは「特別軍事作戦」といい抜けているのだが)によって、NATO加盟国の国防費もこれから増やされそうだ。それでなくとも安倍元首相のような「台湾有事は日本有事」とことさらいいたて防衛費をふやし続けてきた政治家がいる。米国から増額を使しそう嗾されつづけてきた結果である。 

 「わが国の安全保障史上、もっとも大きな投資となる」と3月28日、ホワイトハウスでの記者会見で、バイデン大統領が語った。「プーチンのウクライナ侵攻に力強く対応するために追加の資金を提供する」。ロシアばかりではない。 

  軍備強化をすすめている中国も脅威として、抑止力の強化を訴えた。「中ロ両国に対応するため、宇宙やサイバー、極超音速兵器といった高度な能力に投資する必要がある」。バイデンをささえる米民主党には、「巨額な防衛予算は必要ない」とする意見もある。バイデンは自分の現状認識を「我々は今日、違う世界にいるのだ」(朝日新聞)と語っている。 

  62年10月、ソ連がキューバにミサイルを設置、米国と一発触発のキューバ危機を、ケネディとフルシチョフとが妥協、世界は一応、平和共存の世界となった。が、その後、ソ連が崩壊、東欧諸国がNATOに加盟した。 

  隣国のウクライナまでが、NATOに加盟しそうだ、とする危機感がプーチンの暴発となった。「今までと違う世界」とは、プーチンが核兵器の使用をほのめかし、バイデンも「極限的な状況」には核兵器を使用する、と核戦略を強化していることだ。 

  日本でも早速、改憲派や戦争好き政治家たちが、ここぞとばかり騒ぎだした。