鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

「日本有事」に絶対しない  第106回

2022/07/06
  防衛費倍増、敵基地攻撃能力保持、それも敵中枢への攻撃など、ロシア・ウクライナ戦争が長引くにつれて、自民党の軍拡論はエスカレートするばかり。さらに米軍との「核共有論」まで出てきて、憲法などどこ吹く風の無法状態。

  といっても、防衛費倍増論は5月下旬のバイデン・岸田の日米首脳会談で、初めて出てきた対米公約ではない。 

  すでに4年前、2018年9月、トランプ・安倍の首脳会談あとで、「シンゾウがすごい量の防衛装備品を買ってくれることになった」とトランプは相好を崩していた。

  一方の安倍晋三は「高性能な装備品を導入することがわが国の防衛力強化に重要」とおベンチャラ。トランプの対日貿易赤字の解消作戦に従うかまえだった。 

  その年、18年度に米政府から兵器を購入するFMS(有償軍事援助)の新規契約分は、およそ7000億円。「軍事援助」といいながら、まるで軍事同盟の上納金のようで、もはや「専守防衛」の誓約など投げ捨てようとしている。 

  この頃、自衛隊最大の護衛艦「いずも」に、最新鋭戦闘機F35Bを搭載する研究が明らかになった。同機はステルス戦闘機だが、F35Aとはちがって、垂直に離着陸できる。 

 「いずも」を改造して航空母艦化、そこに対地攻撃機を搭載するのは、「専守防衛」にも反する。それでも計画は着実に進められている。 

  6月上旬に閣議決定した「骨太の方針」では、防衛力を「5年以内に抜本的に強化する」としたが、それは自民党案の防衛費を「5年間で国内総生産(GDP)比2%」にするとの表現を、やや婉曲にしただけだ。 

  といっても、それはすでに2018年、安倍時代の自民党が「防衛計画の大綱」で、「GDP比2%」と提言していた。それをそっくりそのまま踏襲したものでしかない。 

  「台湾有事は日本有事」(安倍元首相)と脅かされていると、防衛費を、武器を、もっと強力な武器を、と考えがちだ。 

   しかし、この狭い国のどこで戦い、どこへ逃げるのか。原発だらけの島国日本ほど、戦争に適さないところはない。