鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

安倍亜流の俯瞰政治
連載第27回

2020/10/20
 カネを出しているのだから、言うことを聞け。新首相の日本学術会議会員の任命拒否は、極めて露骨、ケチ臭い。

 政府に批判的な学者を忌避するのは、学問への尊敬も畏怖もない、学問・言論の自由など考えたことのない権力者の横暴で、民主主義国家の指導者としてはありえない。

 世の中、人材派遣法を改定し、工場労働に拡大、今日の非正規労働者を大量発生させ、自分はちゃっかり人材派遣会社の会長に収まった首相のブレーン、「曲学阿世の徒」のような学者ばかりが学者ではない。

 あるいは、政府ヘの批判はとにかく認めない、という小心さの暴露なのか。この就任早々、アッと驚く報復的人事は、日本の言論、学問の自由にとって認められるものではない。菅首相は、記者会見で「日本学術会議は政府の機関で、年間十億円の予算を使って活動し、任命される会員は公務員の立場になる」と語った。公務員の生殺与奪は政府の自由、なのか。まるで人権思想がない。
―上任命拒否された6人は(安保関連法など)政府提案法に反対の立場だった事との関係は「6人についてはいろんなことがあったが、そういうことは一切関係ない」。

 いろんなことがあった、と語るのは、気にしている、と言うことの証拠を示している。首相は言葉を継いで、「総合的、俯瞰的活動を確保する観点から判断した。これに尽きる」と語った。

 意味不明だが、「俯瞰的」は継承する、と誓った前首相の「地球儀を俯敵する外交」の受け売りのようだ。安倍氏の「地球儀を俯瞰」は、いじましい大言壮語なのだ。

 どうせ言うなら、「地球を俯瞰する」と言うべきだが、彼が言うのはたかだか地球儀。手のひらに載る程度。それを「俯瞰する」などとは大袈裟だ。二代続けてこの程度の首相しか出せない自民党を、いい加減終わりにさせよう。