鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

抵抗は労働者の権利だ  第140回

2023/03/22
  ストライキ発生件数は、年間30件前後。日本の労働運動の現況である。1974年は五千件だった。かつて春闘時には街角に赤旗が翻っていた。労働者の権利の主張は、民主主義の基盤だ。労働者と使用者は対等であり「労働者の地位を向上させること」が、労働組合法の第一条である。

  ところが、労使協調が長く続いて、歌を忘れたカナリア状態の労組幹部ばかりか、法律に従う警察、検事、判事までもが、労働者の団結権と争議権について無知の極みだ。

  会社の利益に従うだけの企業別労組を超えた、産業別労組のひとつ、全日本建設運輸労組関西地区生コン支部(以下、関生労組)への熾烈な弾圧は、労働者運動衰退の象徴である。

  3月6日、大阪高裁(和田真裁判長)の判決は、労働運動の精神を尊重した画期的な判決だった。傍聴席には拍手が鳴り響いた、という。

  昨年3月、和歌山地裁が言い渡した関生労組組合員3人への威力業務妨害、強要未遂事件での懲役1年4月、1年、10月( 3 年の執行猶予)判決にたいして「原判決破棄、いずれも無罪」とした。

  3人の労組員が、使用者団体幹部のもとを訪れ、使用者側が元暴力団員を介在せたことを追及したのだが、判決はつぎのように判断した。

  「抗議等に赴くことは、それが暴力の行使を伴うなど不当な行為に及ぶものでない限り、労働組合が団結権を守ることを目的とした正当な行為として、労組法1条2項の適用又は類推適用を受けるというべきである」。

  労組員がおなじ会社の社員ではない、との地裁の判断については、「産業別労働組合である関生支部は、業界企業の経営者・使用者あるいはその団体と、労働関係上の当事者に当たるというべきだから、憲法28条の団結権等の保障を受け、これを守るための正当な行為は、違法性が阻却されると解するべきである」。

  有罪判決のもとになった、労組脱退者の証言は「鵜呑みのできないものである」と明確に否定した。労働争議を「暴力的」として宣伝する検事の主張を裁判官の良識が認めなかった。