鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

言論の闘争第32回

2020/11/24
言論の闘争

 言論・思想への攻撃が強まっているゃ菅首相が日本学術会議会員候補の6人の学者をはずしたのは、安倍内閣の共謀罪、安保法制、秘密保護法などの悪法制定に対して、学者の良心をかけて反対したことへの、露骨な制裁である。
 学術会議の構成メンバトについては、吉田首相、中曽根首相できえ一指も触れることはなかった。学術団体への介入など、常識では考えられないからだ。
 ところが、首相に就任したばかりの菅氏が、まず野蛮なパージを断行したのは官僚を支配してきた惰性だった。首相本人が認めたのだが公一票顧往身、安倍時代から傍らにぴったり寄り添ってきた、杉田和博宣憂副長官の差金だった。
「学問の自由とは全く関係ない。6人についていろんなことがあったが、そういうことは一切関係ない。総合的、備敵的活動を確保する観点から判断した。これに尽きる」という。
 いろんなこと(政府批判など)があったが、拒否の理由はそっちではない、と弁明し、「総合的、俯瞰的」と大仰な言葉を振りかざして「これに尽きる」と念を押した。ウソの上塗りである。
 それから1カ月たった参院予算委員会では、ン」う一琴つ。ズ守回はへこうした推薦前の調整が働かず、結果として学術会議から推薦された者の中に任命に至らなかった者が生じた」。
 多様性が大事だ、バランスが必要だ、といかにも学術会議が偏向しているかのように言い募った。メンバーを「調整」したかった。が、学術会議はそれに応じなかった。だから任命拒否にした。つまり、パージした、と認めたのだ。なんと乱暴な言い方か。7年8カ月、権力の中枢にいて、辣腕を振るってきた男の横暴である。学問、思想、≡豪調への畏れと敬意がまったくない。
 右翼言論界の月刊誌『Hanada』は「『日本学術会議』と中国共産党」。78ページの大特集を組んだ。日本共産党と中国共産党批判。聞き飽きた歌をうたい続けている。いま、ジャーナリズムの真価が聞われている。