鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

再審法改正は人間救済の道  第245回

2025/06/18
 議員立法による「再審法改正」の運動は、議会内で与野党400名の議員が賛成する大きな声になっている。 

 ところが、自民党の「司法制度調査会」は、鈴木法相にたいして、「法制審議会において、多角的観点からの充実した議論が特に迅速に行われることを強く期待する」などと要請、今国会での議員立法による法改正を妨害している。検察側の影響を発揮できる法制審議会で骨抜きにしたいのだ。 

 5月末、「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」は、改正法案を今国会に提出することを総会(5月28日)で決定した。冤罪解決の運動を続けてきた、冤罪被害者の袴田ひで子さんや、狭山事件の石川早智子さんなども参加した市民運動も、6月3日、国会前で「国会頑張れ集会」を開いた。 

 折悪く土砂降りの雨になったが、各党の国会議員や落合恵子、佐高信、神田香織、永田浩三、鎌田ら450人ほどが集まって声を上げた。 

 その日の夕方は、日本弁護士連合会主催の「いま決める 国会で決める、再審法改正‼」集会が開かれた。再審法改正運動・推進室長の鴨志田祐美弁護士や袴田事件の再審を決定した村山浩昭元裁判官などが参加した。 

 それでも、まだまだ大きな運動にならないのは、「犯罪者」にたいする差別意識が強いからだ。誤認逮捕であっても逮捕当時、新聞、テレビ、週刊誌などが、警察情報をそのまま垂れ流して、極悪人、凶暴、冷血と徹底した否定的人物像を、大々的に、繰り返して報道する。 

 まったく本人に関係ない人物像が描かれ、裁判官もそのイメージに支配され、形成された世論に対抗できない。一方では無実の罪に一生を支配され、場合によっては不名誉のまま絞首刑にされる。 袴田さんのように、せっかく再審が決定されても、検察が抗告して10年も空費する。証拠も検察に都合が悪いのは出さない。これは不正義だ。 

 冤罪は、罪なき人間を世の中から排除してしまう犯罪行為なのだ。冤罪を防ぐためには、警察、検察、マスコミの良心と責任が大きい。