鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

地震大国の原発大国 第270回

2025/12/24
  来年は「核の悲劇」というべき、福島原発事故から15年目。1号、2号、3号炉ともに連続爆発、4号炉だけはたまたま爆発を逃れた。4号炉も続けば、北日本全般に被害が及ぶと言われたほど、破滅的な被害だった。今なお、故郷に帰れない人たちが多い。放射能で汚染された土壌が積み上げられ、解体された地域もまた多い。 

  今月上旬、青森県を中心に震度6強の地震が波及「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発令された。避難者は342カ所、約1万人を生みだした。2011年の原発事故のもとなった、「東日本大災害」の恐怖が蘇よみがえったためだ。 

  福島事故は民主党が政権についていたこともあって、「原発依存度を可能な限り低減する」という決意をもたらした。原発の恐怖からの脱却と平和な生活、それが政治家の任務のはずだ。 

  ところが、岸田自民党内閣は電力会社の圧力に押されて、「原発の最大限活用」と真逆の決定をする。「原発回帰」はしびれをきらした電力会社の強い要求なのだ。喉元過ぎれば熱さを忘れる。 

  とにかく、原発を再稼働させれば、電力料金を下げる。地域での労働者の仕事をふやす。原発推進による経済的利益への誘導だ。しかし、その利益の追求の思想が、福島原発の悲惨を生みだした。再稼働は使用済み核燃料の再処理を必要とする。 

  しかし、青森県・六ヶ所村の核燃料サイクルは、絵に描いた餅。それと連結していた、福井県の高速増殖炉「もんじゅ」は、破綻して立ち往生。再処理工場の破綻も近い。たとえ稼働したにしても、危険性は高まるだけだ。各原発サイトに野積みするか、中間貯蔵所で保管するかしかない。 

  柏崎・刈羽原発再稼働。泊原発再稼働。そして首都圏の東海原発をも再稼働。当面の儲けのために。それだけのために。毒食らわば皿までも。 

  原発のコストは、事故がなくとも高くなった。さらに事故が発生すれば、無限大。事故がないうちに退任すればそれでいい、という無責任経営。二度目の大事故の前に、原発政策を撤退させよう。