鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

朗報と悲報の間   第279回

2026/03/11
  2024 年9月の、袴田巌さん無罪判決よりも嬉しかった。死後再審開始。亡くなってしまったが、それでも、ようやく無罪への道が見えた、41年前の滋賀県「日野町事件」。 

  無実の罪だった。強盗事件で無期懲役にされた阪原弘さんは、服役中に75歳で死亡していた。「やってへん」と主張し続け、再審請求していたが、生きている間は認められなかった。 

  無実の袴田さんも、48年間も死刑囚として独房に閉じ込められていた。死刑執行の恐怖に怯え、精神的に不調となった。それでも生きて釈放され、待ち続けていた姉と一緒に生活し、街を気ままに自由に散歩することができた。 

  しかし、阪原さんは無罪を訴え続けながら、獄死させられてしまった。死後再審開始、と言っても、これから無罪判決までは、時間がかかる。それでも、日野町事件の再審開始報道を聞いて嬉しかったのは、「次は狭山だ」との思いを強くしたからだ。 

  今年1月、熊本の「菊池事件」で死刑執行されたFさんの再審請求は棄却された。そして2月、やはり無実を訴えながら処刑された久間三千年さんの再審請求も棄却された。その悲報の後の朗報だ。 

  3月11日は、石川一雄さん一周忌・追悼集会が開かれる。石川さんは無実の罪で逮捕され、一審死刑判決を受けた。二審で無期懲役にされたが、無罪判決がないまま、31年間も刑務所に閉じ込められていた。再審請求を3度続けたが、棄却されたまま、昨年3月、病死した。いま、妻の早智子さんが第4次再審請求中。 

  いかに日本の司法が非人間的か。狭山事件無罪判決の後、日本の検察は、「法制審議会」に依拠して、さらに証拠開示を制限し、検事の抗告を強めようとしている。現状では、警察は自白を強要して釈放しない「人質司法」。検事は裁判所が再審開始を決定しても、抗告してやり直し裁判開始に抵抗する。裁判所も誤判を改めない。 

  民主的な司法制度にしよう。その機運が高まっている。過ちは率直に正す。人を信頼し、助け合う。それが民主主義国家の精神であろう。