今週の新社会

社会不安を招く
735万人が失業 社会保障の劣化も

2021/02/23
「デジタル改革へ」  6法案を国会提出


 菅内閣は2月9日、デジタル改革関連6法案を国会提出した。成立すれば、監視社会の強化と更なる雇用不安や社会保障の劣化をもたらす。

 常に最大利潤の獲得が至上命題の資本主義社会で、残されたフロンティアとされるのがデジタル社会だ。

 その資本蓄積の大きさとスピードは、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が象徴的だ。アップル以外は、創業わずか四半世紀足らずで世界を席巻する巨大企業になった。

 人間社会の利便性を向上させ、幸せを生むべき技術は、資本主義社会では全く逆のものとなる。とりわけ暗黒郷(ディストピア)となるのは雇用だ。

 より少数で生産やサービス提供ができるため余剰人員が生じ、利益を生まない企業や産業は衰退し失業者を生む。定型労働だけでなく、AIによって精神労働、知的労働分野も代替される。

 これを予測した2017年の経産省「新産業構造ビジョン」は、第四次産業革命技術の社会実装(I oT、ビッグデータ、人工知能、ロボット)によって30年は15年比で735万人の雇用が失われると報告する。「対策を講じれば161万人の雇用減ですむ」とするが、新技術の雇用創出効果は弱い。

 また、ウーバー・イーツに代表されるアプリを通じたプラットフォーム産業の進展がある。その労働は請負で、労働基準法で守られない。ケガも社会保険も自分持ちだ。

 日本は、非正規労働との同一労働同一賃金を否定する差別労働を量局裁が合法とする。そうした中で政府・デジタル庁が社会のデジタル化を促進すれば、雇用は暗黒郷にまっしぐらだ。

 加えて富を独占する巨大企業は、避税技術を駆使、税負担を極小化しており、社会保障の財源はますます消費税に傾斜する。ILOは19年の「輝かしい未来と仕事」で、このような社会の到来を警告している。

 求められるのは、労働運動や市民運動が働く人々の権利を守る規制強化を要求し、デジタル主権や個人情報の自己管理権を求めて闘うことだ。すでにスペインのバルセロナ市は技術革新を民主化し、データを社会化する取組みを行っている。