今週の新社会

アスベスト最高裁判決 原告が勝利
国・建材メーカーの責任認める 1人親方も救済

2021/06/01
国と建材メーカーの責任が確定した=5月17日、最高裁前。
写真は建設アスベスト訴訟全国連絡会首都圏統一本部のHPから



 最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は5月17日、約1200人が国と建材メーカーを訴えた全国33件の「建設アスベスト訴訟」のうち、神奈川、東京、京都、大阪の4訴訟、約500人に対し、原告ほぼ勝訴の判決を出した。

 建設作業中にアスベストを吸い込み肺がんや中皮腫など健康被害を受けた労働者や遺族が、2008年に東京地裁に提訴以来13年、国と建材メーカーの責任を初めて認めた。

 今回の判決は、高裁判決で労働者ではないとされた個人事業主「一人親方」などに対する国の責任や、被害に対するメーカーの責任を認めなかった一部の高裁判決を覆した。

 判決が建材メーカーらの共同不法行為責任を認めたことは、被害者側が建材メーカーの行為と損害の因果関係の立証が困難という実態を受け止めたものと評価できる。一方、屋外作業者に対する国・企業の責任否定や、期間で救済に線引きをしたことは不当だ。

 そして、健康被害を受けた原告の7割がすでに亡くなっており、被害者が生存している間に国が補償をすべきで、他の訴訟についても和解を急ぐべきだ。

 アスベスト関連疾患による労災認定者は約1万8千人おり、今後も被害者が毎年出続ける。基金等の創設によって、裁判に頼らなくても救済の道を開くべきだ。

 アスベスト問題に取り組んでいるNPO法人ひょうご労働安全衛生センターの西山和宏さんは次のコメントを寄せた。

基金への拠出企業に求めよ

 アスベスト被害者の多くは建設関係の作業に従事した作業員であり、最高裁判決が国と建材メーカーの責任を認めたことは、個人事業主を含む建設労働者とその遺族の補償・救済につながる。長期の訴訟を闘い抜いた原告の皆さんと、弁護団に敬意を表したい。

 ただ、屋外作業者に対する国の責任を否定した点など課題も残る。原告側と「統一和解案」に合意し、訴訟に参加していない被害者の補償に向けて「基金」の創設を決めた国の対応は評価したいが、企業側に基金への資金拠出を強く求めるべきだ。