鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

日本政府の偏見差別 第60回

2021/07/06
 コロナウイルスの感染拡大によって、学生たちの生活は急変している。授業がリモートになって、一年間はほとんどキャンパスに入ることができなかった。学生生活の魅力は、講義ばかりかゼミやサークル活動など、ひととの出会いにあるのだが、それが保証されなければ、学ぶチャンスは半減する。

 飲食店などサービス産業の休業が長かったため、アルバイ卜が極端に減って、生活が苦しくなった学生が多い。困窮している学生にたいして、政府は昨年5月から今年の3月まで、最高20万円を支給した。総額で503億円というのだが、朝鮮大学校の在校生への支給はなかった。

 この問題を人権団体が差別政策だと訴えていた。6月下旬、国連で人権問題をあつかう4人の特別報告者から、政府に「マイノリティを不当にあつかった差別だ」として、「是正を強く求める」との書簡が送られてきた。

 いま、この国で朝鮮・韓国人はヘイトスピーチのターゲットにされている。安倍・菅内閣が日韓関係をこじらせ、ことさら反韓感情が拡大している。まして北朝鮮系家族の子弟の多い、朝鮮大学校にたいする敵視政策は、かつての侵略者特有の偏見だ。

 国連特別報告者の書簡にたいして、加藤官房長官は「大学などが必要性を認める者にたいしては支援を行っている。『各種学校』に通う学生は日本人・外国人ともこの支援制度の対象外」だとして、「恣意的な差別ではない」と国連側に反論した、という(「東京新聞」6月22日)。

 つまり、朝鮮大学校は学校教育法上の「各種学校」であって、「大学」ではない。だから「学生支援緊急給付金」の対象ではない、と公然たる差別を正当化している。この差別は「朝鮮高校」を高校無償化の恩恵から外している延長線上にある。

 しかし、朝鮮大学はすでに60年の歴史をもって日本社会に定着し、卒業生の大学院の受験資格を認めている大学は多い。関東地区の大学のサッカーやラグビーのリーグ戦参加も認められている。形式論理を使っての見え透いた排除は、差別者の汚いやりくちである。