今週の新社会

コロナ死は政治災害
病床削減 自宅放置

2021/11/03
疾走する救急車(イメージ)
政府はコロナ禍の反省もなく、病床削減を強硬し、患者の受入れ先はさらに減る


 自公政権による不採算部門を切る医療政策が進められた結果、新型コロナパンデミックで多くの命が失われることになった。自民党の17年総選挙公約は「誰もが安心して受けられる医療の確保を図る」だが、実態は新型コロナ患者の自宅放置だった。この公約の前段にある「病床の機能分化・連携を進める」ことによって病床数が減らされたことによる“政治災害”だ。

 自公政権は、団塊の世代が75歳以上になる25年を目標にさらに病床削減を進め続けている。16年度中に全都道府県で策定された地域医療構想では、19年の123・3万床を25年には121・3万床に減らす。 

 しかし、自公政権は削減が進まないことに業を煮やし、骨太方針2019で再検証と見直しを求めた。それがその年の9月、再編統合について特に議論が必要と全国の公立・公的病院424病院の名指しにつながった。 政府は、「地方の実情を踏まえない」「基準がおかしい」「感染症医療の視点がない」と批判されながら推進の構えをかえず、何としても医療病床の供給抑制を達成する構えだ。 

 新型コロナ蔓延で医療崩壊の危機に陥ったのに今年の通常国会で政府・与党は病床削減と、その推進に消費税を財源とする補助金をつけた医療法改悪を強行した。 

 東京都でも小池都政は公立病院と公的病院の事実上の民営化である独立行政法人化を押し進めており(本紙10月6日号2面既報)、都議会の自民、都民ファースト、公明、維新などは10月13日、定款案の可決を強行した。
 
 自治体議員有志が8月末と10月初め、厚労省に新型コロナ対応で臨時大規模入院施設を要請したが、逃げの一手に終始したのはこのような背景がある。そして、不採算部門の切捨て強行のため厚顔にも「適正化」「効率的運用」「制度の持続性」を掲げる。 

 だが、75歳以上の高齢者が増えれば病床ニーズは増え、それに対応するのは地域医療構想と法的に一体化している「地域包括ケアシステム」、地域の医療・介護の受け皿作りだ。 

 また、病床削減や転換、機能分化にとどまらず、地域で支える在宅医療や介護の体制作りが押しつけられている。介護には非正規の介護職員に加え、地域のボランティアの支援まで要求する。究極のコストカットだ。 

 そしてメタボや生活習慣病と称して、病気を自己責任化し、70歳から74歳の窓口負担を2割にした政府は、75歳以上の2割負担を所得条件付きながら先の通常国会で強行した。

 制度実施は早ければ22年10月だが、ストップさせる闘いは来夏の参議院選挙と一体で進めなくてはならない。