今週の新社会

コロナ感染 医療放棄で「自己責任」

2022/02/09
 図ー1 全国保健所長会・HPより
 

  新型コロナウイルス「オミクロン」の感染は在日米軍基地などから始まり、沖縄、山口、広島で広がり、日本全土に拡散している。政府のコロナ対策の想定を超える第6波パンデミック(感染爆発)は、全国的にかつてない医療崩壊から医療放棄の事態となった。感染症医療の大原則である「早期発見、保護、治療」が崩れ、無自覚・無症状の感染者が放置され、今やコロナ感染は〝自己責任〟とされている。

  今回のコロナウイルス・オミクロンは「爆発的な感染力があるものの、若年層を中心に重症化しにくく、自覚症状も少ない」というのが政府・コロナ専門家の見解だ。これを根拠に、「社会活動を維持するために感染リスクを許容する。さらに重症化リスクが低い人は医療機関の受診は避け、自宅療養を可能とする」という対策に切り替えた。 

  また、重症化リスクの低い若い世代はPCR検査を行わず、症状が出たら医者との会話だけで診断する「方法」も許されている。濃厚接触者の感染経路調査も放棄され、無自覚の感染者が放置されている。 

  これまでも新型コロナウイルスの自覚症状がない感染者には、自宅待機させてきた。しかし昨年8月には自宅療養で死亡数は250人、前月の8倍に急増した経緯がある。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、症状を軽いと説明するべきではないと警告している。 

  コロナ感染は医療や福祉現場にも広がり、その機能が縮小、マヒする状態も出ている。さらに保育所の休園、小中学校など学級閉鎖、保護者の自宅休業など、戸惑いと混乱が起きている。 

  医療現場では、専用ベッドや医療スタッフが限られる中、災害発生時の治療優先順位を決める「トリアージ」が行われている。そのため、入院対象は高齢者や中症・重症者に限られている。感染症以外の重い患者は入院や手術が延期され、救急患者はたらい回しの状態だ。また、「検査キット」は不足して「検査難民」を生み出すありさまだ。 

  PCR検査はもとより、第3次ワクチン接種もOECD加盟38カ国中、日本は最下位だ。これらの原因は、検査態勢の不備に起因している。さらに政府・自治体が、これまで進めてきた医療基盤の削減にある。また、昨年には多くの自治体議員が感染者の大量保護施設を求めたが設置もされてない。

検査・治療が原則! 

  これまでのコロナ対策は、発症した感染者は保健所を経由して入院処置等をしてきた。しかし保健所は長年の削減政策で事実上のパンク状態だ(図1)。

  自治体でも医療行政は後退してきた。東京では、2019年12月、小池百合子知事が突然、都立・公社病院の地方独立行政法人化を表明した。東京都ではすでに16あった都立病院は8つ。今年からは東京都は都立、公立病院を、「儲かる医療・病院」に舵を切る。 

  また、全国の看護師配置数をみると一床あたりアメリカが4・1人、イギリスが3・1人、カナダが3・9人に比べ、日本は0・9人。2017年度時点でOECD加盟国 のうち30位(2021年11月日本看護協会)と貧弱な状態だ。また、医師の数は先進国7カ国中最低だ。 

  コロナ感染第6波から第7波への対策は急務だ。先ず政府は大量のPCR検査体制の確立だ。大規模な大量検査可能な数多くの施設の開設とワクチンの普及だ。過年度の予算は余っている。予備費5兆円近くを投入した現金給付の検討、さらに休業補償金と申請の手続改善だ