今週の新社会

岸田外交は軍事力
日米軍事一体化の「新時代」外交

2022/02/23
   第2次岸田文雄内閣が発足してから約4カ月。岸田首相は目先を変えた政策を打ち出したが、格差と貧困問題は一向に解決の兆しはなく、「コロナ禍」は深刻さを増している。一方では、日本の安全保障、外交政策は大きな変貌をとげようとしている。 

      政府は日本の安全保障の基本方針である国家安全保障戦略(NSS)を9年ぶりに改定し、「敵基地攻撃能力」保有を含めた防衛(軍事)戦略に突き進もうとしている。 

  岸田首相は記者会見で「新しい資本主義」を打ち出し、「分配」を最重点課題と強調した。

  また年頭所感のなかで『新時代リアリズム外交』を推し進める」とも表明し、従来の外交政策の転換があるかのように幻想を持たせた。 

  岸田首相は自民党ハト派リベラルの伝統、「軽武装経済重視の系譜をもつ「宏池会」を率いている。そんなことから「森―小泉―福田―安倍と4代続いたタカ派の『清和会』の従米外交」からの脱却を期待する向きもあった。 

  岸田総理が言う「新時代リアリズム外交」とは、「普遍的価値の重視、地球規模課題の解決に向けた取り組み、国民の命と暮らしを断固として守り抜く取組みの三本柱」だと言う。 

  それは、安倍―菅と続いた外交路線を基本的に踏襲し、日米同盟を基軸にした安保外交であり、対中国包囲政策に他ならない。 

  その証が9年ぶりに改定する「国家安全保障戦略(NSS)」だ。 

  改定する「国家安全保障戦略」は「敵基地攻撃能力」の保有が最大の焦点になる。 

  2015年の集団的自衛権行使容認に道を開いた安保法制の整備を突破口とし、過去最大を更新し続ける防衛費(軍事費)。専守防衛の原則から逸脱する護衛艦の航空母艦への改修。ステルス戦闘機F35の爆買い。宇宙、サイバー空間での部隊配置。そして1000キロを超すミサイルや極超音速滑空弾の開発など、「専守防衛」をはるかに超えた装備の高度化に限りがない。 

  1月7日には岸田政権初の「日米2+2」が開かれ両国の外務、防衛担当閣僚が協議した。ここで確認したことは、「中国を念頭に協力し、あらゆる選択肢」のための軍事協力と研究開発だ。これと一体に「台湾有事」を想定した軍事戦略を新たなNSSで固めようとしている。 

  ちなみに、自衛隊の日米軍事協力の実態を見てみよう。

  昨年6月、中国軍が奄美大島侵攻を想定した過去最大規模の「オリエント・シードル(東洋の盾)」が2か月間実施された。陸上自衛隊1400人、米陸軍1600人が参加し、奄美大島には沖縄の米嘉手納基地の「PAC3」の部隊が初めて参加し、北海道の矢臼別演習場では米陸軍と陸上自衛隊のロケット部隊が初めて共同射撃訓練をした。 

  昨年11月には南西諸島などで、「台湾有事」と沖縄を主戦場に想定した統合軍事演習も行われた。米軍は第7艦隊など5800人、自衛隊3万人が地対艦ミサイルの射撃訓練、敵前上陸作戦、輸送作戦訓練と日米合同訓練だ。 

  岸田総理の「新時代リアリズム外交」とは、米戦略の「リアル」に追随するためのものだ。 

  岸田政権は、これと一体的に憲法9条の形骸化を狙う。改憲反対の闘いを強めよう。