鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

ロシアの暴君とアベノヤマイ  第93回

2022/03/16
  独裁・プーチン大統領の歴史的誤算、というよりは戦争犯罪ともいうべきウクライナ侵略は、国際世論に包囲されて追いつめられ、核兵器の使用を示唆するなど、さらに混乱を深めている。 

  プーチン大統領の侵攻は、ウクライナ東部に力ずくで立国させた「ルガンスク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」で、「ロシア系住民が虐殺されている」と強行された。しかし、それは確認されていない。 

  ソ連時代に穀倉地帯とされたウクライナが独立し、NATOに接近している。プーチンがそれに恐怖と屈辱を感じるようになっていた。

  しかし、それを阻止するための武力侵攻など、今世紀最大の暴挙となるであろう。モスクワ、サンクトペテルブルクなどでの、戦争反対の抗議行動が伝えられている。圧政下での反戦運動が、ロシアの人びとにたいする信頼感を深めている。 

  ますます険悪になっていくプーチンの表情をテレビで見ていると、このままロシアに君臨し続けられるのか、とプーチン政権の崩壊さえ予想させる。 

  一日でもはやく停戦し、これ以上、死者がでないためにも、ちいさな声でもあげようと、わたしたち「さようなら原発」と「戦争させない1000人委員会」運動も、3月5日、東京で集会とデモを実施した。3月31日、代々木公園でプーチン反対の集会をひらく。 

  ロシア・プーチンの戦争犯罪の隙をついて、火事場泥棒的に出てきたのが、安倍晋三元首相の「米核兵器の共有(ニュークリア・シェアリング) 論だ。彼は「小型核兵器」所有論を、首相になる前にも主張していた。 

  ことあるごとに「核」を振りまわしたがるのは、いま核使用で脅すプーチンと27回も会談したことが自慢の「アベノヤマイ」だ。 

  この時代離れの暴論を、松井一郎日本維新の会代表や自民党福田達夫総務会長などが、「議論しよう」と、ともち上げている。日本の好戦主義による、無視することができない策動だ。 

  ロシア・ウクライナ両国民を苦しめる戦争を、改憲に利用するな。