鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

どさくさ軍事経済への突進  第101回

2022/05/25
  ロシアのウクライナ攻略の長期化にともなって、日本でもキナ臭さが漂いはじめてきた。NHKの関連番組には、防衛省職員と笹川記念財団の研究員が出ずっぱり。戦局の解説が盛んだ。 

  それより必要なのは、日夜、死者がでている戦闘をいかにして止めるかの国際的な議論のはずだ。 

  今回のロシア軍の侵攻が、大ソ連邦の夢を追ったプーチン大統領の野望によるのか、それともNATO軍に包囲される悪夢から発生したものなのか。最近、ロシアに長い国境を接するフインランドまでもがNATO軍事同盟に加盟する動きがでてきた。 

  岸田首相も対ロシア攻撃を強めるEUとの会議に参加、共同記者会見をしたり存在感を強めようとしている。NATOの会議にもオブザーバー出席すべきだ、との声もあったりして、平和国家を標榜してきた日本が、このどさくさで戦争に急接近する動きが目立っている。 

  自民党が進めたい軍備拡張三本柱とは、ひとつに安倍元首相得意(特異)の米軍と自衛隊との「核共有」論、二本目に短期間に声が大きくなった「敵基地攻撃論」改メ「敵基地反撃論」。三本目に「防衛費二倍論」だ。このうち、すぐに強行したいのが倍論だ。 

  「今、中国経済が日本の3倍になり、国防費が5倍、開発費がつけば6、7倍だ。NATO諸国は2%だ。韓国もGDPは日本の約3分の1だが、国防費は日本に近づいている。私は2%でも少ないと思う」(『サンデー毎日』5月22日、田原総一朗対談「日本の核武装 真剣に議論する」) 

  と言い切っているのが、安倍内閣で官房副長官補、国家安全保障局次長だった金原信克氏。俗論だがこの意見は耳に入りやすい。しかし、他の国との大いなるちがいは、日本は戦争を放棄していることだ。武力を使わない。平和交渉が憲法の精神なのだ。 

  実現性は薄いとしても、核武装論を掲げて軍需生産を進める野望が強まっている。軍民両用(デュアルコース) 可能な、重要技術研究に官民協力、秘密化する「経済安全保障推進法」が、5月11日、成立した。