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鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」
再稼働最優先の落し穴 第104回
2022/06/15
運転停止を訴えられた北海道電力は、10年たっても、もたもた、泊原発再稼働の安全性を証明できなかった。
本来ならば、訴えている原告が、原発は安全性を欠き、住民の人格権を侵害する、と立証すべきだ。しかし、科学的、技術的知見は、事業者たる被告にあるのだから、被告の北電が危険性はないことを立証する必要がある。5月31日、札幌地裁が出した運転差し止め命令の骨子である。
「被告がこれを尽くさない場合、原発が自然現象に対する安全性を欠き、事故による住民の人格権の侵害のおそれがあると事実上推定される」
「八年半という期間は社会通念に照らして短くない。被告がなお立証を終えられないことは、安全面や、審査における問題の多さ・大きさをうかがわせる」
原子炉の変更許可申請から8年半がたっても、北電は安全性を立証できない。こりゃもう駄目だ、と裁判所が匙( さじ)を投げた。
政府は、経済財政運営指針「骨太の方針」で、「防衛力の抜本的強化」とともに、「安全最優先の原発再稼働」を主張している。とにかく「再稼働」させようという魂胆だ。
しかし、肝心の「安全」が証明できないのだから、安全抜きの「最優先の原発再稼働」となる。無責任極まりない。札幌地裁の判決は、再稼働を急がせる政府の鼻先に、「差し止め」命令書を突きつけた英断だ。
北電は、泊原発の防潮堤の地盤が、液状化の可能性がない、と証明できなかった。いつになったら証明できるか、まったくわからない。
このように安全審査が長期化している原発は、廃炉決定以外の36基(建設中を含む)中、19基もある。まして、原子力規制委員会の審査を通過しても、再稼働できるとはかぎらない。周辺自治体の議会の反対や地域住民の反対運動がある。
岸田内閣は、原油の輸入減や地球温暖化にかこつけ、とにかく電力会社の利益のために再稼働させようとしている。しかし、原発の恐怖は、ウクライナ戦争でも再度立証された。一基の原発の存在が、「防衛力強化」を台無しにする矛盾!
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本来ならば、訴えている原告が、原発は安全性を欠き、住民の人格権を侵害する、と立証すべきだ。しかし、科学的、技術的知見は、事業者たる被告にあるのだから、被告の北電が危険性はないことを立証する必要がある。5月31日、札幌地裁が出した運転差し止め命令の骨子である。
「被告がこれを尽くさない場合、原発が自然現象に対する安全性を欠き、事故による住民の人格権の侵害のおそれがあると事実上推定される」
「八年半という期間は社会通念に照らして短くない。被告がなお立証を終えられないことは、安全面や、審査における問題の多さ・大きさをうかがわせる」
原子炉の変更許可申請から8年半がたっても、北電は安全性を立証できない。こりゃもう駄目だ、と裁判所が匙( さじ)を投げた。
政府は、経済財政運営指針「骨太の方針」で、「防衛力の抜本的強化」とともに、「安全最優先の原発再稼働」を主張している。とにかく「再稼働」させようという魂胆だ。
しかし、肝心の「安全」が証明できないのだから、安全抜きの「最優先の原発再稼働」となる。無責任極まりない。札幌地裁の判決は、再稼働を急がせる政府の鼻先に、「差し止め」命令書を突きつけた英断だ。
北電は、泊原発の防潮堤の地盤が、液状化の可能性がない、と証明できなかった。いつになったら証明できるか、まったくわからない。
このように安全審査が長期化している原発は、廃炉決定以外の36基(建設中を含む)中、19基もある。まして、原子力規制委員会の審査を通過しても、再稼働できるとはかぎらない。周辺自治体の議会の反対や地域住民の反対運動がある。
岸田内閣は、原油の輸入減や地球温暖化にかこつけ、とにかく電力会社の利益のために再稼働させようとしている。しかし、原発の恐怖は、ウクライナ戦争でも再度立証された。一基の原発の存在が、「防衛力強化」を台無しにする矛盾!