鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

民主主義の「国葬」(続) 第112回

2022/08/17
 安倍晋三元首相を銃撃した「怨念の弾丸」が、個人への怨みにとどまらず、自民党と旧統一教会との暗い関係を打ちぬいていた。


 勝共連合や旧統一教会をめぐる騒動は、60年代後半のことと思われていた。ところが、どっこい、名前を変えて生き延び、いまに至るまで信者の家庭を破壊し続けてきた。そればかりではない、自民党の右傾化に深く関わっていたのだ。


「世界平和統一家庭連合」。「世界平和」と「家庭」を「統一」「連合」させる、というあこぎな大衆欺瞞が、堂々とまかり通ってきた。


 実態がおなじ宗教団体の「変名」「偽名」を、文科省が認証したのは、2015年、安倍内閣での下村博文文科省時代。それまで文科省は「実態が変らないのに名前を変えることはできない」
(前川喜平・元文科事務次官)と改名申請を門前払いしていた。


 下村氏は「報告はあったが、特に私からは指示していない」と文科省の方針が急変したことは認めている(「サンデー毎日」8月14日号など)。旧統一教会は、壷を超高値で売りつける「霊感商法」で信者から収奪していた。が、その被害が問題化しても、警察は摘発、立件せず、野放しになっていた。



 ジャーナリストの有田芳生氏は95年秋、警察庁最高幹部から「政治の力でできなかった」といわれた、という。


 90年代公安記者だった青木理氏も、組織的捜査に乗り出すと聞いていた動きがパタリと止まった。公安警察の最高幹部は「政治の意向だ」と漏らした、と証言(同号)。



 反社会的な宗教団体が権力等から擁護されて信者を殖やし、政権党員は票を配分してもらって国会で多数を占め、憲法改悪を狙う。悪のできレースだった。祖父の代から関係が深かった安倍元首相が、この宗教団体の広告塔だった。


 安倍氏は「国葬」にされて、闇がそのまま残る。真相を知らない海外の政治家たちが集められ、国会でウソをつき放題の男のウソが上塗りされる。それで岸田内閣を安定させる。これが現在ただいまの「日本民主主義」の歪んだ姿だ。