鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

目を覚ませ、岸田首相  第119回

2022/10/12
  国葬で人気を上げようとした。が、真逆の大悪評。支持率急落の低空飛行。人の死の政治利用が人格まで疑われる結果となった。自民党の元幹事長・二階俊博などの「国葬やらなければバカ」との挑発に乗って、引っ込みがつかなくなったお粗末。 

  側近の浅はかな入れ知恵で、膨大な国税をドブに捨てた「アベのマスク」以上のムダガネだった。腹立たしい。 

  マスクとはちがって国葬には勝共連合、統一教会二世の悲惨と怨恨が絡みついていた。「妖怪」岸信介以来、戦後政治史の暗部が国葬に映しだされた。

  岸田内閣の三大失政は、アベ国葬の強行と極端な「原発推進」。それと防衛費の倍増。防衛費倍増計画はアベ政治の延長だが、「極端な原発推進」はアベ政治よりも極端、血迷った暴政というしかない。無個性の政治家が、ヘンなところで「独自性」を発揮しようとするから、足もとをすくわれる。 

  岸田首相は広島出身といいながら、世界の常識に逆らって「原発の新増設」とか、「建て替え(リプレイス)」などと口走っている。さらに再稼働促進、超老朽原発の運転延長。正気の沙汰ではない。 

  ヒロシマ、ナガサキ、フクシマの悲惨に、まったく無痛覚な政治家、とは恐るべきだ。国葬反対運動よりも、さらに広範囲な運動がこれから必要とされる。 

  忘れられているが、まだフクシマ以来の「非常事態宣言下」なのだ。原子炉の下では、高温のデブリが発熱、燃えつづけている。炉を冷やすために海水で冷やし、膨大な量の温排水はとめどもない。 

  岸田首相は、「革新炉」を建設するというのだが、つまりは小型原発ということで、危険性には変わりない。そればかりか、数多く建設する場所がない。 

  日本列島は活断層だらけ。「革新」原発どころか、老朽炉は危険。廃炉も解体困難、核廃棄物の最終処分場の建設予定地さえ見つからない。汚染水、労働者被曝。 

  岸田首相よ。安倍派に迎合、側近のいいなり。ただ従うだけでは、政治家として命取りになるぞ。それが「国葬」強行の教訓ではないのか。