鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

無防備都市宣言  第121回

2022/10/26
  ロシアのウクライナ侵略による悲惨な映像を、毎日、茶の間で眺めている。それにつれて防衛予算の増大やミサイル配置の拡大などのニュースが、当たり前のような顔をして流されている。 

  台湾有事は日本有事」。日本が危ない。安倍元首相が残した恫喝、である。

  かつてソ連が健在だった頃、北海道防衛論が盛んだった。ソ連軍が北海道に上陸したとき、どう防衛するのか。月刊誌や週刊誌が特集を組んだ。自衛隊指揮官たちが「図上作戦」をやっているのを、わたしは取材で眺めていたことがある。

  いま、沖縄・先島諸島の大きな地図を取り囲んで、自衛隊の幹部たちが、指揮棒を振るって「図上作戦」に熱中しているのだろうか。 

  台湾で戦争が起これば、沖縄も戦場になる。この政府の宣伝が沖縄のひとたちに、ついこの間の戦争の記憶を、恐怖とともに想起させている。岸田内閣は2023年の概算予算に「避難シェルター」設置を計上した。 

  これにたいして、中山義孝石垣市長は「検討ありがたい」と早速歓迎のコメントをだした。 

  「八重山市町会会長を務める中山市長は、シェルター整備を県側に求めていた。政府から正式な連絡はないとした上で、『有事の住民避難は時間がかかると認識しており、安全を守る方法の一つとしてシェルターというのは「あり」だと思っている』(沖縄タイムス9月16日)」。 

  ウクライナのシェルターで暮らしている人びとの、不安な表情をみるまでもなく、沖縄の人びとは聖地「ガマ(洞窟)」で暮らし、集団死を強要された。4人にひとりが戦死・戦病死した。その記憶が覚めないうちに、また避難を強制させられようとしている。 

  政府の「戦争に備えろ」「シェルターにはいれ」との強要は、沖縄の歴史の否定であり、憲法違反だ。戦争にカネを使うのではなく、戦争させないための、平和と友好のためにカネを使うべきだ。 

  沖縄と先島で「ノーモア沖縄戦」の運動がはじまった。シェルターよりも「無防備都市宣言」。国葬反対運動のあとは、戦争をさせない、広範な運動だ。