鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

トマホークの悪夢  第127回

2022/12/14
    岸田文雄首相、無邪気な空想家なのか。それとも、なにも考えない空白家なのか。トマホーク500発購入、原発新増設・リプレイス。この薮から棒の方針、現実離れした浪費は、膨大な予算で国の経営を破綻させるばかりか、戦争に加担させられる危険を急速に招いている。

    考えが奈辺にあるのかさっぱりわからない。誰かになにかをいわれるとすぐ飛びつく軽薄者。安倍以来の防衛費倍増要求が、トマホークの購入代になるとは考えられなかった。
   
    トマホーク。巡航性ミサイル。地上すれすれに獲物を狙ってピンポイントで命中する。衛星利用測位システム(GPS)で誘導するので、宇宙衛星50基の打ち上げが要求される。敵基地攻撃の主力で最大射程は、2500キロにもおよぶ。

    これまでも安倍政権は、トランプに押されてオスプレイ、F35戦闘機を爆買い、福祉を犠牲して平気だった。生活保護費、高齢者の年金、介護手当などが削り取られてきた。その上こんどは、防衛費を現行のGDP(国内生産)1%を2%に倍増する。 

      ロシアのウクライナ侵略のあと、NATO(北大西洋条約機構)加盟国が、それぞれ2%に増額する、軍事力強化を模倣している。日本は厳然たる憲法9条を維持し、「専守防衛」がギリギリの歯止めだ。武力行使はしない、との誓約がある。それが国是だ。ほかの国に追随する必要はない。

    トマホークは先制攻撃の武器で、弾頭に核爆弾を搭載できる。これまで、米製兵器の購入を専らにして、三菱重工など日本の軍需産業に予算をまわしていなかった。そのこともあって「スタンド・オフ・ミサイル」を開発しはじめたのだが、またもやアメリカ政府と軍需産業の圧力に負けた形での軍備強化。米戦略に組み込まれたままだ。 

      もはや自民党のハト派など死に絶えた。このままでは増税に苦しめられ、米戦争に参加させられそうだ。日本海沿岸に林立する原発がミサイル攻撃によって、悪夢のような原爆地獄が再現される。本気で自公民好戦政権に決着をつけよう。その準備をしよう。