今週の新社会

ヒロシマ踏みにじる
核抑止を正当化
「禁止条約」にふれず

2023/06/07
   「軍拡のためにヒロシマを政治利用するな」と原爆ドーム前で訴える「G7広島サミットを問うドーム前集会」=5月14日

     被爆地・広島市で5月19日から21日に開かれた「先進7カ国首脳会議」(G7サミット)は、「被爆者の1人として怒り、憤りを感じる」との声があるように、核兵器禁止条約に触れず被爆者の心を踏みにじった。広島サミットはロシアの核威嚇を批判する一方で、自ら保有する核は防衛目的で戦争を防止すると抑止論を正当化、核廃絶は「究極の目標」と先延ばしにした。

広島サミット 

   
G7サミットは岸田文雄首相の地元で開かれた。広島県や広島市は昨年5月23日、広島開催決定を受けて共同記者会見を開き、松井一實広島市長は「核抑止を超えた理想を追求するための外交政策の実現に向けたゆるぎない決意が、広島から世界へ発信されることを希望」と期待した。 

     期待は完全に裏切られた。核抑止論を正当化し、ウクライナへの軍事支援と軍事ブロック強化、ロシア・中国封じ込め戦略を確認しあうものとなった。 

     特に核軍縮に関して「広島ビジョン」が合意されたが、核の非人道性やG7核保有国の
核軍縮・核廃絶、92カ国・地域が署名し、68カ国が批准している「核兵器禁止条約」は完全に無視された。 

     首脳らは広島原爆資料館を視察したが、短時間かつ非公開で、被爆の実相を確認したかは疑問で、パフォーマンスに過ぎないと言わざるを得ず、「ヒロシマの心」も被爆者の期待も裏切り踏みにじるものとなった。 

    新社会党広島県本部の三木郁子委員長は、「『核なき世界』と何度唱えても、米国の『核の傘』から一歩も出ないし、出る気もない」と政府・岸田首相の姿勢を厳しく批判した。 

   被爆者や平和運動団体は「ヒロシマの地で核兵器の正当化をさせない」と、平和公園に一切立ち入らせない厳戒態勢の中、抗議行動を繰り広げた。 

   さらに、ウクライナのゼレンスキー大統領が来日、G7首脳にF 16戦闘機など武器供与のみ訴え、戦争終結や停戦に向けた「仲介」や「交渉」を迫ることはなかった。 

   「招待」されたブラジルのルラ大統領は22日に広島市で記者会見し、「ウクライナを支援する米国のバイデン大統領はロシアへの攻撃をけしかけている」と批判、平和実現のためにはロシアと敵対するG7の枠組みではなく、国連で議論すべきだと訴えた。 

    また、世界的な気候危機や飢餓と貧困、ジェンダー、難民問題と人権などの大きな課題に踏み込む強いメッセージはなかった。 特に議長国日本は、LGBTQや気候変動対策、難民受入れなどの人権問題で、他の6カ国からはるかに遅れ、〝人権後進国〟の姿を世界にさらした。