鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

岸田脱兎内閣を撃つ  第154回

2023/07/12
  軍備強化のための軍事費倍増は バイデン米大統領が岸田首相を説得したもの、とのバイデン談話(6月20日、現地時間)を、実は岸田からいいだしたものだった、とバイデンが訂正した(NHKニュース、29日)。 

  と官房長官が記者会見で訂正した。対米従属か自主外交か。米国の傀かいらい儡政権というと恐ろし気だが、逃げる内閣。脱兎内閣というべきか。 

  が、すでに岸田はバイデンと3回会っていて、「果敢なリーダーシップ」と持ち上げられていた。安倍元首相はトランプの言いなりにステルス戦闘機F35A(1機140億円)など100機以上も売りつけられている。 

  先の国会で、慌てふためいて防衛産業強化法、防衛財源確保法などを通過させたのは、あたかも、「わしらを忘れているんですか」とか、三菱重工、川崎重工、三菱電機、日本電機、富士通、IHI、日立製作所など、名だたる防衛産業が、クレームをつけたからであろう。 

  トヨタもふくめた企業献金で、それぞれが自民党をささえてきた。防衛産業強化法に立憲民主、国民民主両党が賛成しているのは、それらを支えている企業の労組が賛成しているからだろう。 

  対米従属外交をいまさら指摘するまでもなく、米日一体化の強化が公然と主張され、安倍元首相のように「台湾有事は日本有事」(台湾の戦争は日本の戦争)と、煽ったりしている。沖縄、先島諸島に、中国にむけたミサイルを並べ立て、中曽根元首相がいみじくも言った「ハリネズミ作戦」が展開されようとしている。 

  敵基地攻撃など、戦後世代の私などには考えられない愚策だ。78年前、敗戦の8月15日がやってくる。非戦の誓い。沖縄戦終了の6月23日は終った。国会では原発逆走の「G X法」やマイナンバー法改悪が可決され、そのまま閉幕した。岸田批判は中途半端に終わり、上げた腕は降ろされている。 

  自民党総裁の任期、来年9月にむけて、岸田首相は、「憲法改悪に取り組む」という。維新、国民民主も改憲に賛成だ。いままでとは違う、幅ひろい、大衆的な運動をすすめるにはどうするか。