鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

人権無視の空港倍増計画  第164回

2023/09/27
  久しぶりに、成田空港周辺をまわった。PARK(アジア大平洋資料センター)の講座の一環としてである。高いフェンスが張りめぐらされ、三重のところもある。開港からすでに46年も経った。 

  それでもいまだ「厳戒空港」なんだ、と驚かされた。手狭になった羽田空港に代わる、新国際空港建設は当初、「富里」案だった。が、反対運動が激しく、政府は断念、66年、「成田・三里塚地区」に緊急着陸した。 

  あまりにも急旋回の決定だったので、自民党支持の農民たちも猛然と反発した。71年に農婦の住宅と農地の強制代執行があった。機動隊がデモ隊にガス銃の水平打ち、東山薫さんが死亡した。そのあと、78年に決死の管制塔占拠闘争があって、開港は2カ月間延期された。 

  成田は「暫定開港」だったが、羽田の国際便が復活、増強された。これにたいして、成田はいま「機能増強」を掲げ、2本目の2500㍍滑走路を1000㍍も延伸させ、さらに第3滑走路を建設する方針だ。そのために面積を倍に拡大しようとしている。 

  用地確保のため、わたしもよく通った「労農合宿所」(横堀農業研修センター)の撤去、明け渡しを求めて提訴、ほかの土地や共有地の持ち分の売却も要求している。三里塚闘争はいまだ続行中なのだ。 

  いまでも空港周辺の騒音が激しい。これから発着回数を30万回から50万回にふやす方針である。さらに運行時間を朝5時から深夜24時30分に延長する。すると、周辺住民は4時間半しか、静謐な時間をもてなくなる。深夜便を飛ばせないのは、内陸空港の欠陥だったが、ついに翌日までの飛行の強行となるのだ。

  人間は昼に働いて、夜は寝る、これは真理だ。が、住民が深夜労働者にされる。それでも労働者には深夜手当が支給される。しかし、同意をえない、人権侵害として、住民は屈従を強いられる。 

  周辺住民は千葉地裁へ「夜間飛行差し止め請求」を提訴した。農民を追い出し、農業をつぶす内陸空港は時代遅れである。早朝から深夜におよぶ離着陸は、禁止すべきだ。