鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

貧困化の責任者は誰か  第165回

2023/10/04
  かつて、日本の社長の年収で飛び抜けて多かったのは、ルノーから日産自動車に乗り込んできたゴーン会長だった。あたかも占領軍の司令官のようにふるまい、28億円の高額だった(2017年)。 

  それから、5年たって、トップのZホールディングスの慎ジュンホ氏は2年連続で、40億円以上の報酬をえた。2位がセブン&アイホールディングの外国人社長。4位がソニーグループの吉田憲一郎会長の18億8800万円。1億円以上は、日立製作所の役員20人など434社、928人。2億円から5億円までの経営者が253人も並び立つ。 

  これにたいして、労働者の平均賃金は443万円。世界24位、2000年の18位から急落している。なにしろ実質賃金では、2000年の90%にすぎない。賃上げのストライキなど、遠い昔の話だ。いまは政府の「賃上げ」のかけ声に、大企業が乗ったかのような、少額の賃上げに止まっている。 

  コロナ禍とロシアの戦争で物価が上がり、貧困化が進んでいる。が、全米自動車労組の賃上げストを横目で見ているだけである。平均賃金が443万円といっても、300万円台の世帯が多い。韓国やイタリアよりも低い収入だ。若者たちがオーストラリアへ、日本を脱出して出稼ぎにいく時代となった。 

  「『福祉施設化』進む塀の中」「高齢受刑者『作業』名目でリハビリの日々」 

  東京新聞9月19日の記事だ。19年前にくらべて、あらたに収容された受刑者は、半分以下に減った。その反面、65歳以上の高齢者が3倍にふえた。それも70歳以上の増加が顕著という。 「各地の刑務所では『老人ホーム化』が進んでいる」

  まるで、マンガのような事態だが、笑いごとではない。この記事を読んで「明日は我が身」と思えないひとは、幸せといえる。老人は出所しても行き場がない。それで「無銭飲食」を繰り返しては、もどってくる。老人には「懲役」は無理、リハビリが必要なのだ。 

  この状況をつくったのは政治の貧困だ。世襲政治家と連合内御用労組の労働貴族が犯人だ。